abyss

□声涸れるまで、泣いて、叫んで、喚いて、足掻いて、僕はただ君の名を呼ぶ
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そう思うとやっぱり嬉しくて涙が止まらなくなってしまう。

隣にただ座って傍にいてくれる。

たったそれだけのことにこの上もない喜びを感じる。きっと、こんな些細な幸福を積み重ねて人は大きな幸福を得るのだろう。
たった七年の短い人生だったけれど、己はかけがえのない何かを得ている、そう信じる。



「行くよ」



涙を無理矢理止めて、まだ掠れている声だったけれど、はっきりと言う。
シンクはこちらを見ないままにため息をついた。どこか呆れを含ませているのは気のせいじゃない。



「イオンはこんなことを望んで預言を遺したんじゃないよ」


「知ってる」


「アイツはアイツなりにアンタを心配して――ああ、もしかしたらこんな選択をさせないために遺したのかもね」


「俺もそう思う」


「けど、アンタは選ぶんだね」



声に出さずに頷く。
少しだけ気持ちがすっきりしたような気がする。きっと彼が隣にいてくれたからだ。嬉しくてシンクに抱きつけば、彼は文句を言ったけれど、やっぱり拒絶はしなかった。



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