abyss

□孤独を知るがゆえに
1ページ/6ページ






涙を流して、ごめんなさい、許して、と魘される子供。
朱金の短く切り揃えられた髪の毛は汗で少し水気を含んでいる。

不意に伸ばされた手を彼は思わず取り、優しく握り締めた。





ジェイド・カーティスの目下の悩みはこの状況をどうすべきか、ということだった。
目の前の子供、ルーク・フォン・ファブレと同室になるのはアクゼリュス以前から、実はなかった。子供と同室になるのは大抵ガイ・セシルだったからだ。ガイの子供に対する父性愛というか、過保護っぷりは旅の同行者たちの認めるところである。
であるからして、ジェイドがこのような場面に出くわすことなどなかった。実のところ、ジェイドはこの子供にどう接したら良いものか、困っていた。
件(くだん)のアクゼリュスで自身は思っていた以上に取り乱してしまい、この何も知るはずのなかった子供を責め立てるだけ責めて、フォローさえできなかったのだ。実際、この子供だけが悪かったわけではないし、かと言って、他の同行者たちが正しかったわけでもない。誰もが罪を背負わなくてはいけなかったのだ。


.
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ