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□寂しがり屋な君に愛を!
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ユーリ・ローウェルは悩んでいた。どうしたら、朱い子供、ルーク・フォン・ファブレが心を溶かしてくれるのかということを。


「……分からん。だいたいあいつも意地を張り過ぎなんだよ」


悪態をつきながらもユーリは困った顔などしていなかった。むしろ、難題であればあるほどに彼のほっとけない病はその病状を悪化させているようだった(もちろん良い意味で)。


「ユーリ、何をしてるんです?」

「意地っ張りなお子様をどうやって休ませるか考えてた」

「お子様?」

「ほれ、あそこでリタの手伝いしてるだろ」

「ルークですね。……そうですね、最近あまり眠れていないと聞きました」


心配げにルークを見つめて、エステルはため息を吐いた。

突発的に術式を思いついたとかでユーリたちは学術閉鎖都市アスピオにあるリタ・モルディオの研究室にいた。
嬉々として術式に挑むリタの様子からして、周りが見えているかどうか怪しい。代わりにジュディスが気を配っている。カロル・カペルは完全に巻き込まれる形で、ルークは自ら名乗り出て、リタの術式の検証の手伝いをしていた。


「おっさんは日和見決め込んでるし」

「何よう、青年だってそうじゃないの」

「はいはい、仰る通り」


完全に棒読みだ。五月蝿く文句を言っているレイヴンを無視してユーリはルークのいるところに歩いていった。


「ふふ、ユーリは本当にルークしか見えてませんね」

「本当にねえ……一途な想い、ね。若人は真っ直ぐでいられて羨ましく思うよ」

「レイヴン?」

「いんや、気にしなさんな」

「そうなんです?」


そんな会話がなされていてもユーリは完全に無視してルークに話しかけていた。


「ルーク」

「あ、ユーリ!」


嬉しそうにユーリに笑いかける様子は子犬のようで、ユーリの庇護欲を刺激する。
ユーリはルークの手を引いて立たせると術式の構成に夢中のリタに一言声をかけるとルークを寝室へと導いた。もちろん、リタには聞こえておらず、代わりにジュディスが応えた。


「ユーリ、眠いのか?」

「眠いのはルーク。俺はその付き添いみたいなもんだ」

「大丈夫だよ。俺、そんなに柔じゃないし」

「ちゃんと眠れてないやつが言うセリフか?」

「そ、そんなことは、」

「あるだろ」


ルークはユーリに手を繋がれたまま、泣きそうな顔になって俯いてしまった。
ルークは無理をしている自覚が薄いらしい。ハルルにいた時に言って聞かせたはずだが、また繰り返した。
よく眠れるようになったと言ったから、ルークと別部屋にするようにもなった。甘え過ぎるのは嫌らしい。が、ユーリとしてはむしろこのままルークと同室でいたいというのも本音。


「悪い。言葉がきつ過ぎたな。けど、分かるだろ。言っただろ? 俺はいつでも胸を貸してやるって」

「うん……」


ユーリとルークはベッドに座った。繋いだ手は離すのが勿体無い気がして離さずにいる。


「怖い夢でも見てんのか?」

「ん……俺が殺した人々が恨み言を言いながら俺を真っ赤な海に引きずり込むんだ……」

「……」

「許さない、殺してやる、死んでしまえ――って、そう言われ続けてると、何か」


ルークは唇を戦慄かせた。次いで、噛み締める。
黙って聞いていたユーリはルークの口元に人差し指を触れさせた。


「ルーク、切れるから、もう噛むな」

「ご、ごめん……」

「謝るなよ。ああ、遅かったな。血が出ちまった。ちょい待てよ」

「あ、」


ユーリは手を離すとルークの頬にその手を添わせた。そうして顔を寄せるとぺろりと唇を舐める。ルークは何が起こったのか、理解できていないらしく呆然としている。


「激しいのがお好みならそうするけど?」


ルークはその言葉で我に返ると首を振った。ユーリは「それは残念」と言いながら、ルークを押し倒した。


「ゆ、ゆーりっ……!」


舌足らずに呼ばれると何だかイケナイことをしている気分になり、ユーリは苦笑した。


「何もしねえよ。傍にいてやるから寝とけよ」

「でも」

「ルーク、みんな心配してる。もっと自分を大切にしろ。お前はもう一人じゃない。みんながいる。たまには頼ってやんねえと拗ねるぞ」

「ユーリ、も?」

「俺も」


ユーリはルークの額に口付けると身体を離した。ルークが恥ずかしそうに頬を赤く染めている。


「やっぱりユーリはずるいなあ……そうやって俺のこと理解してますって顔で俺を誘惑するんだから」

「悪いか? 俺はこれでもルークを誰より理解してる自信はある。少なくともおっさんよりは」

「何でレイヴンが出てくるのか分かんないよ」


顔を赤くしたままふにゃりと笑うルークは可愛かった。いつもより可愛く思えるのは、ここのところ笑うルークを見ていなかったせいか。


「ね、ユーリ」

「ん?」

「俺が眠るまで、手、繋いでてほしいんだ」

「分かった。んじゃ、ちゃんと寝ろよ?」

「うん。おやすみ、ユーリ」

「おやすみ、ルーク」


手を再び繋いで安心したルークはゆるゆると目を閉じると健やかな寝息を立て始めた。
ユーリはルークが目を覚ますまでずっと手を繋いだままでいた――。









(本当は寂しがり屋なくせにいつもいつも強がる君。
僕がいつでも君の傍にいるから、どうか僕を頼って。
僕は君を泣かせたりなんかしないから、絶対に)

寂しがり屋な君に愛を!










――――――――――
大変お待たせしまして申し訳ありません、土下座。
きちんとゆず様のリクエストにお応えできていますかどうか、甚だ疑問ですが、こんな感じでいかがでしょうか……!

本当はさり気なくルークを甘やかすユーリが書きたかったはずなのに何だかおかしなことに……。
しかも、意地っ張りなルークもちと中途半端なような、……すみません、土下座。
ううむ、精進精進。

煮るなり焼くなりお好きにして下さって構いませんが、返品は不可の方向で!笑

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