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□飛べない鳥の詩
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暗い暗い闇の中、確かに這い上がったはずなのに、光が見えた途端に堕ちた。
また闇の中。心は痛いとばかりに血を流す。
同じ痛みを抱えた君を見て、愛しさと憎しみが募った。どうして毅然としていられるのか、どうして何も言ってくれないのか、どうして同じ目の高さになれないのか。すごく悲しくて苦しくてどうにかなってしまいそう。

「ルーク、どうした?」


ルークはハッとして心配げに見つめるユーリの瞳とぶつかった。泣きたくなるほどに優しい表情だった。

ここは帝都ザーフィアス。ユーリが下宿している宿屋の部屋。その部屋にある椅子を窓際に持って行ってルークはその椅子に座っていた。ユーリは窓際近くにあるベッドに座っている。
古代要塞都市タルカロンでのデュークとの戦い、星喰みの撃破、旅の終結を持ってみんなそれぞれの道を歩き始めたばかり。
ユーリは心の整理がついたらしく、最近すっきりした顔をしだした。悩んでいたのが嘘のようによく笑うようにもなった。ただ、たまに手のひらを睨んでいる時もあるけれど。それでも彼の中にある譲れぬ正義は揺るぐことはないようだ。
むしろ、そのことで微妙な心境になっていたのはルークの方。なぜかはよく分からないけれど心は未だにわだかまったまま。乗り越えたはずの苦しみや悲しみは、心の中を掻き乱して、意味の分からない癇癪まで起こす始末。なのに、ユーリはそんなルークにずっと寄り添って離れなかった。まるでルークの内心を読み取ったかのように、吐き出したい心の声をそのまま言うものだから、いつもいけないと思いながら甘えてしまう。


「ユーリ、俺」

「ん?」

「ごめん、いつも、」

「ルーク、俺はさ、お前の葛藤を理解してる、つもりだ。ほんとのところはやっぱルークにしか分かんねえけど、けどな、喪われたものを背負うってのは生半可な覚悟じゃできないって思うんだ。だからそれをしようとしてるルークは素直に尊敬してるよ」

「そんな、大袈裟な話じゃ、ないよ」

「そうか? ルークの心の中の大半は喪った何かで満たされてんじゃねえかって思ってたんだが、勘違いか」


違わない。

ルークの心を占めるものの大半はこれまで奪ってきた生命や、あの時、アクゼリュスで己の意志でないにしろ、無為に喪われた生命たち、その懺悔と痛み。
旅をしている間はまだ良かった。悩んでもその悩みを吹き飛ばすような出来事の連続だったから。悩むたび、かならずユーリが胸を貸してくれていた。それは今も変わらないのに、なのに。


「俺はもう飛べない。けど、飛べないなりに生きていく方法はある。それをあの旅で知った」

「俺も、もう飛べない。けど、分からない。まだ夢を見てるのかも」

「夢くらい見たって別にいいだろ。それくらいは許されるさ」

「許されたくない」

「何をしたとしても俺はルークを許す。そう決めてる」

「許さないで」

「無理。俺は頑固なんだよ」

「自分で言うなよ」

「はっはっはー嘘はついてないから別にいいだろ」

「ユーリってそんなのばっかり」


ルークは泣きそうだった。
許されたくないのとおんなじくらい許されたいと願っていたから。それをユーリは与えてくれるから。いつも依存してしまっている自分が嫌になるくらいにユーリは優しくあってくれる。それは己の首を真綿で絞められるような、感覚。


「俺はもう飛べない。本当だ。きっとルークには翼が見えてるんだろうけどな、この翼は二度と使わない。もう、使えない。
けど、ルークは違う。たぶん、飛ぼうと思えばいつだって飛べる。けど、俺は、飛んでほしくない。俺にはルークが必要だから」


ほら、やっぱり。ユーリは優しい。失った翼の幻を見て、綺麗だと言ってくれる。

(ユーリ、俺は翼をもがれてるんだ。だから、もうどこにもいけない)

どこへでも行けるのはユーリの方。でもユーリはどこにも行かない。己がどこにも行かせない。










(飛べない鳥が見る夢はどんな夢だろうか?)
(飛べない鳥が謳う詩はどんな詩だろうか?)
(それは二人にしか分からない)










――――――――――
ユリルクお茶会サイト様に献上する予定だったのに、超ネガティブ。
なので、ボツ。
サイトの更新に回すぜ!
くそぅ……!

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