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□ひとりぼっちの君へ
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この瞳は昔から普通の人には見えないものを映す。そのせいで両親とも双子の兄とも距離ができて埋められなくなってしまった。学校でも上手く人の輪の中に入れず、田舎の学校に転校を余儀なくされてしまった。もちろん、己だけ。
転校先の田舎はのどかな田園風景が広がり、都会よりも少しだけ空気が冷たく感じた。でも嫌な冷たさではない。気持ちが引き締まるようなそんな冷たさ。
ルーク・ファブレは強張った表情を少しだけ緩めた。ここならきっと大丈夫。そんなわずかな期待と。駄目かもしれない。わずかな恐怖と。感情は複雑を極めた。

ルークは意を決してバス停のベンチから立ち上がると、バッグを肩にかけ、これからお世話になるファブレの傍系親族、アスラン・フリングスとその奥さんのジョゼットが住む家に向かって歩き出した。
けれどその一歩はやはり重い。何度も足が竦みそうになるのを何度も堪えてルークは歩き続けた。そうして着いた家はこじんまりとした二階建ての瓦葺きの家で、ルークは少しだけカルチャーショックを受けた。
ルークの見てきたファブレの親族の家はどれも大きくて豪奢で、それが当たり前だと思っていたからだ。


「いつまでそこに立ってるつもりだ?」


玄関先で立ち尽くしていたルークは突然の声にびくりと肩を揺らした。


「お前、ここに用があるのか」

「う、うん、今日からお世話になる、予定、で」

「ふうん」


振り返ると黒く長い髪に黒い瞳で、さらに黒い学生服姿の青年がそこにいた。学ランとカッターシャツの胸元を大きく開けているので中に着ているTシャツが見えている。
青年はおもむろにルークの目の前の横滑りのドアを開けると中に向かって声をかけた。


「こんちはー!」


少ししてから奥から人影が現れた銀色の短髪に青灰の瞳の男性は青年を見ると、穏やかに微笑んでいらっしゃいと言った。次いでルークに目をやると少し驚いた顔をしたが、すぐに微笑んでルークに声をかけた。


「おや、君は……ルーク君ですか?」

「は、い。今日から、お世話に、なります」

「そう堅くならないでください。気楽にして。今日から家族になるんですから」

「か、ぞく」

「はい。ですから、私のことはアスランと呼んでください」

「アスラン、さん」

「ふふ、最初から呼び捨てはさすがに無理ですね。分かりました、少しずつ慣れてくださいね」


ルークはぼろぼろ涙を流してアスランを見つめた。ぼやけて彼の姿を正確に捉えることはできないけれど。
隣でルークの様子を見ていた青年はルークの頭をぽんぽんと撫でた。何故かは分からないけれど、その手のひらは、両親の手のひらよりずっとずっと優しくて暖かくてさらに涙がこぼれた。


「何があったかは知らねえけど、泣ける時には泣いとけ。でないと終いには壊れるぞ」

「う、ん、」


顔をくしゃくしゃにしてルークは何度も頷いた。我慢できなくてルークはとうとう座り込んで、殺しきれない泣き声が漏れる。青年もルークに付き合って座るとルークの頭をぽんぽんとまた撫でた。
アスランはそんな二人の様子を慈愛に満ちた微笑みで見つめていた。










(泣き虫だな)
(泣けってゆったのそっちのクセに)
(ああ、言ったな)
(何だよ)
(うん、苦労しそうだな)
(何が)
(こっちの話だから気にするな)
(気にするっつーの!)





素直に泣ける彼を羨ましく思う。
ひとりぼっちの君へ










――――――――――
終わり。
まだ続きそう。
夏目パロのつもりでプロット立てましたが、設定のみで話は完全にオリジナルな感じ。
うん、難しいな!
青年はルークに一目惚れさ!
そして短いorz

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