戴き物のお部屋

□欲ばり
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口が滑った。

パッと手で口を隠すがもう遅い。
そろそろとユーリを見れば、驚いたように目を見開いている。

(バレた…!)

そーいうの意識しまくってるってきっとバレた、絶対バレた、モロバレだ。
そもそも直前まで考えていたことが考えていたことだけに、
ルークの顔は真っ赤になった。
ユーリが口を開く前に、ルークはおろおろと逃げ腰になる。


「あ、あの俺、次体育だからもう行くな…っ!」


ルークは慌てて弁当箱を片付けると、逃げるように早々と校内に走っていった。
ルークを見送ったユーリが軽く頬を掻き、


「……あのバカ」


と呆れ顔で呟いたことは、一目散に逃げ出したルークの知るところではなかった。



顔を沸騰させたまま脇目もふらず走ったルークは、玄関先まで来てようやく足を止めた。
走っているときは無我夢中だったが、足を止めたとたん羞恥心が蘇る。

(…はずかしい…っ)

みっともない、

かっこ悪い、


「ううう〜…っ」


ルークが奇妙な声で唸っていると、「ルーク!」と名前を呼ばれる。
名前を呼んだのは―――声だけで分かる、ユーリだ。
おろおろと動けないでいるルークのもとに、ユーリが駆け寄ってくる。


「ゆ、ユーリ…!なんで…」

「ほら、忘れモン」


差し出された物に目を向ければ、ホワイトカラーの携帯。


「弁当食ってたとこに落としてたぜ」


食べていた時にうっかり落とした携帯を、ユーリはわざわざ届けに来てくれたらしい。


「う…、あ、ありがと…」


何かと締まらない自分に脱力しながらも、携帯を受け取ろうと手を伸ばすが…


「おっと、」


―――手が届く前に、ひょいとそれを取り上げられてしまう。


「…!な、何すんだよ!」

「その前に、俺に言いたいことがあったんじゃねーの?」


途端に、ぐっと喉が締まって声が縮んだ。

―――一緒にいたいと、思った。

そばにいて、楽しかったらそれで十分だと思ってた。

だけど本当は、

もっと近づきたくて

あの手で触ってほしくて

あまつさえ、キス、したいとか
そんなこと考えてるのがバレたらどうしようって

急に、怖くなった。

大好きだと思える人と、一緒にいられて

すごく、すごく、幸せなはずなのに

ときどき、おんなじくらい不安になる。


「………ッ…」


うまく言葉が出てこなくて、もどかしい。
ルークは困惑したように顔を歪めた。
それをどう捉えたのか、ユーリの重い溜息が玄関に響く。
それが、妙に耳に残った。


「…ま、いいや。けど、言いたくなったら言えよ?」


苦笑しながら携帯を渡す。

手が触れた。触れた瞬間、

息を飲むような小さな悲鳴が上がり、ルークが怯んだように手を引いた。手が触れただけで、動揺した。
ルークはなぜか自分のほうが傷ついたような顔をしてユーリを見つめながら、その場に立ち尽くした。


「ああ、……悪い」


ユーリは特に動揺した様子もなく謝る。
謝る必要なんて少しもないのに、だ。

―――いつものようにまっすぐで凛とした黒い瞳が、一瞬霞んで見えた。

その滅多に出さない瞳加減に、ルークの心臓がズキリと痛む。
しかしその霞んだ瞳はすぐに消え、ユーリは何事もなかったように手を振った。


「もう授業始まるな。んじゃ、また放課後」


いつもなら頭に手を載せてくれる、そんな間合いだった。
だけど、ユーリの手はこない。
触らないように、気を遣っているように見えた。ユーリはそのまま、ルークの横を静かに通り過ぎていく。

(……いや、だ…)

嫌がってると…、避けられてると、思われたんだろうか。

違うのに

全然、違うのに


「ユーリ…っ!!!」


気づいたら、とっさに叫んでいた。
ルークはユーリのワイシャツを掴みあげて、胸元にどんと顔を押しつける。


「ごめ、んなさい……っ!!」


ガシャンと、携帯が、音を立てて床に滑り落ちる。
その音は人の失せた玄関に、驚くほど響いた。


「ちがうんだっ、おれ…ユーリに、触ってほしくないわけじゃない…!!」


俯いて、バカみたいな主張をする。

俺は、欲ばりだ。

嫌われたくないくせに、もっと近づきたいなんて

触られたい、なんて


「俺が、触ってほしいって思えるのはユーリ、だけなんだ…!!」


その瞬間、ユーリはむりやり自分からルークを引き剥がした。
驚きと焦燥感でルークは思わず顔を上げる。
今度は後頭部を持ち上げられ、わすがに上に引き寄せられた。

唇が、重なる。

一度離れて、ルークが逃げ腰になる前にまた塞がれる。
唇が離された瞬間、膝から崩れ落ちそうになるのをユーリが支えた。


「…バカ、お前ホント、バカ」

「んな…!?ひ、人が必死で…!」

「わーってる。だからあんまかわいいこと言ってくんな、バカ」


口調は相変わらずだが言ってることは甘々だった。
真っ赤になったルークに、ユーリは低い声で囁く。


「大事にしてーんだから、うっかりそんな発言すんなよな…」

「え?」


きょとんとするルークに、ユーリはいつものように朱髪に軽く手を載せた。


「この先ただで済むと思うなよってこと」


うわあ。

今度は、分かった。

体中が熱くなる。

ルークは小さくコクンと頷くので、精一杯だった。






END










――――――――――
志穂さまからのリクエスト!

『ユリルク学パロで初キスもの』


……なんですが……!

あわわ…;;(蒼白)

何だこれ!?ただチューしてるだけじゃん!!

しかも支離滅裂!!

す、すみません……(吐血)

そして、キスのところで邪魔が入るという素敵な設定を頂いたにも関わらず、全く活かされてないっていう(涙)
いいとこガイが参上してくれたぐらいですかね…

すみません志穂さま(T□T)!!!
苦情や書き直し、受け付けます……;;!!!


さ、幸先が果てしなく不安だ…orz

ここまで読んで下さり、ありがとうございました!



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