戴き物のお部屋

□白い聖夜
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「さっっむい!寒い寒い寒い寒い!!」

「これだけ雪が降ってるんですから。それは寒いでしょうね」

悲痛な声を上げたルークに、ジェイドは、しれっとした顔で答える。

「うううぅ……」

市場へ向かう道の途中でルークは呻いた。

晩餐の準備をしていたのだが食材が足りなくなり、ルークとジェイドが買い出しへ出ることになった。

そこまではよかったのだが、想像以上の外の寒さには参った。

今更ながら、いつもの服にコート一枚羽織っただけで出てきた自分が恨めしい。

「だからもっと厚着してくるように言ったでしょう。なぜそんな薄着で出てきたんですか」

「宿の中は暖かかったから、これで大丈夫だと思ったんだよっ」

ガチガチと歯を慣らしながら言ったルークに、ジェイドはやれやれとため息をつく。

まぁ、雪国で育ったジェイドとは違い、ルークは寒冷な気候に慣れていないのだから仕方ないのかもしれないが。

それに、いつだって雪が降っているような街だが、今日は一段と冷え込んでいるように感じた。

「……」

雪の積もる街道の途中で、ジェイドは足を止めた。

「ジェイド?」

気づいたルークが振り返って、首を傾げた。

ジェイドは首に巻いていたマフラーを外す。

そして……

「へ?」

ジェイドは、はずしたマフラーをふわりとルークの首にかけた。

「………………」

ルークは唖然とジェイドを凝視する。

「寒かったのでしょう?」

「ど……、どうしたんだジェイド!?ジェイドが優しいなんて!!」

「ルーク。いらないのでしたら返してくださって構いませんよ」

「わーっいるいるいる!ジェイドってほんと優しいよな!」

ルークはスルリとジェイドから離れて、ジェイドがかけてくれたマフラーをクルクルと首に巻き付けた。

柔らかなそれは、まだほんのりと温かかった。

「………でもジェイド。ほんとに、何かいいことでもあったのか?」

心なしか、本当に機嫌が良いような気がする。

「いいえ?………ただ」

「ただ?」

「……今日は、クリスマスだそうですから」

「まぁ、クリスマスだけど。……あ、もしかしてクリスマスプレゼント?じゃあ、コレくれるのか?」

「ええ」

「マジで!サンキュー、ジェイド!」

ルークは両手でマフラーの端を掴んで、嬉しそうに笑った。

が、再びルークの首が傾いて、今度は疑問を宿した瞳がジェイドに向けられる。

「でもさ、ジェイドが誰かに贈り物とか、なんか意外だ。クリスマスとかあんま興味なさそうなのに」

「ええ、興味はありませんね。クリスマスに贈り物をしたのもこれが初めてです」

「あ、やっぱり。……けど、じゃあ何で今年は、マフラーをくれる気になったんだ?」

不思議そうに訊いてくるルークに、ジェイドは微かに柔らかな笑みを浮かべた。

「……さぁ。どうしてでしょうね」




しんしんと、絶えることなく雪が降り続ける、白い夜。

それは……



あなたがいて、はじめて


……特別な日だと思えた、聖夜──





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