戴き物のお部屋

□桃の節句にご用心!
1ページ/1ページ





3月3日
桃の節句、ひな祭り

「今日は女の子の日でしょ?
そこであたし思うわけよ、今日くらい女の子は楽しても良いんじゃないかって」
「・・・何が言いたいんだ、アーチェ」
「だからはい、掃除やっといて、チェスター」
「おまっ、何言ってやがる!
掃除サボりたいからって適当なこと言ってんじゃねぇよ」
「なによ〜
良いじゃん、一回くらい」
「それにだいたいお前、もう女の子って歳じゃねぇだろうが
何が女の子の日だから〜、だ
そういう事は歳考えてから言えってんだ」

ここバンエルティア号では比較的良く見掛けるこの光景。
アーチェとチェスターのこの口喧嘩が火種となり、『チェスターさん、酷いです』とミントが言うや否や『女の子に歳の事を言う?!』と、たまたま近くを通り掛かったルーティがキレ、本日女性陣は何もしないと仕事を全てボイコットしてしまったのである。

不運にもクエストに出掛けていなかった何人かの男性陣が仕方無しに現在家事を分担しながら熟している。

そんな不運な男性陣の中にユーリもいて。

彼は現在食堂でケーキ作りに励んでいた。

「ちょっと!、こっちおかわり足りないんだけど?!」
「こっちもだよ
も〜早くしてよね、バカチェスター!」
「くそっ
5月5日を覚えろよ、アーチェ!」
「うぅ・・・、僕もカイル達と一緒に甲板掃除が良かった・・・」
「グダグダ言ってないでさっさと動きなさいよ、ルカ!」
「うぅ、リッドさんやリオンさんに邪魔されずに甘いモノが食べられるだなんて・・・
今日はなんて良い日なんだ!」

様々な言葉が飛び交い、喧騒する。

「一体いつまでやってりゃ良いんだ?」

あまりにも騒がしくっていい加減疲れてきたユーリは愚痴を零す。
とそこに食堂の扉が少しだけ開かれ、出来た隙間からルークが顔を覗かせた。

「え、えっと・・・
チャット、いるか?」

遠慮がちに尋ねるルーク。
先程までクエストに出ていたのでバンエルティア号内で起きている現状を知らず、クエスト達成を報告する為にチャットを探していたのだろう。
食堂に居る全ての人達の視線を一身に受け、とても居心地が悪そうだ。

「ボクはここです
ボクは今ケーキに忙しいのでお話があるのでしたら此処まで来て下さい」
「えっ、でも俺、汚れてるから・・・」

ヒラヒラと手を振りながらケーキを口にするチャットを見付けたルークは食事している所に先程まで戦闘をしていて汚れている衣服のままで入っていく事に戸惑いと躊躇いを隠せない。

「ならこれに着替えると良いです」

急に声を掛けられて驚いたルークは声を掛けてきた人物、エステルに手首を掴まれ、食堂の隅まで移動させられた。

「・・・これは?」

食堂の隅にはひっそりと紙で出来た箱が置いてあり、その箱の中から出て来た衣装らしきモノにルークは首を傾げる。

「ひな祭りにはお内裏様が必要ですから
あ、それともお雛様の方が良かったです?」

最初に出した衣装っぽい黒色の布地とは対照的に今度は煌びやかな刺繍が施された布地を何枚も取り出すエステルにルークはますます訳がわからないと首を傾げたままだ。

「あ、着替え方がわからなくても大丈夫です
着替えさせてあげますから
そして着替え終わったらわたしの隣りに並んで下さいね!」
「え?」

戸惑うルークを余所にエステルの表情は真剣そのもの。
ずいっと詰め寄るエステルに『狡い』と、『私も隣りに並ばせたい!』との声があがり。
ならば私も私もと立候補者が現れ、順番で・・・。なんて事にはなったけど、『1番は私です!』とエステルが頑としてそれだけは譲らない。といった状況になってルークには最早どうして良いのかわからない。

「みんな待って!」

そんな所にティアの制止の言葉。
それにルークが安堵を覚えたのもつかの間。

「もう過ぎてしまったけれどネコの日も近くにあった事だし、ルークにはコレも似合うと思うの!」

と、ティアがどこからともなく取り出したのはネコミミオプション付きのモンコレレディなあの衣装・・・。

「てぃあ?!」

なので思わずルークは叫んでた。

「ぅ・・・、それも捨て難いです・・・」
「でしょ?!」
「ですが今日はひな祭りですのでお雛様な格好をして貰いたいと思うのですが・・・」
「・・・確かにそれもそうね
ならせめてこのネコミミだけでも・・・」
「あ、それは名案です!
きっと可愛い事間違いなし、です!」

そんな理解不能な、理解したくない話しを繰り広げてた二人が急に自分の方を向き、ルークは引き攣った顔で二人を見詰め返す事しか出来なかった。

その後、ルークは二人に服を毟られた挙げ句、下着一枚の姿にさせられてから十二単着せ替えられ。

「・・・俺、もうお婿に行けない」

と、泣いた。

「大丈夫よ、ルーク
私がお嫁に貰ってあげるわ!」

顔を手で覆ったルークを元気づける為か、ティアがそう述べるが、『ルークをお嫁さんに貰うのはわたしです!』とエステルや他メンバーも口々に言い、ルークの心はもう色々とズタボロだ。

「んじゃお前達全員女の子じゃなくなった事だし、女の子を連れて行かせて貰うとしますか」

そう言ってひょいっとルークを担ぎ上げたのはユーリ。

ルークがあまりにも可愛そうで見るに見兼ねたのか、ルークを独占独り占めしたかったのか。

彼はルークを担ぎ上げたまま何食わぬ顔で平然と食堂を出。

唐突な出来事に暫く呆然としていた食堂に残る誰しもがやがて何かに気付き、『あ―――!!』と叫び声を上げたのであった。

おしまい。





――――――――――
遊夢さまのサイトから過去フリー作品を際限なくいただいた第二弾。
さすがです、ユーリ!
最後の最後に美味しいところをかっさらって行くのは彼しかいないですよね!
ルークの猫耳は破壊力抜群だと思う。
撫でくり回したくなります、笑。

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ