戴き物のお部屋

□幸せの奇跡
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今日は週に一度のエステルとのお茶会。
普段ならお部屋でお茶をするのだが、とても天気がよかったのでせっかくだから中庭でお茶会をすることに。

鳥の囀り以外なにも聞こえてこない中庭で、それをBGMにガイが入れてくれたアフタヌーンティーを口に含む。
口いっぱいに紅茶のいい香りが広がり、本当に落ち着く。

その中、ソーサーにカップを置いたエステルが声をかけてきた。




「あの…、ルークは好きな人とかいます…?」
「ふぇっ!?好きな人…!?」




飲みかけた紅茶は何とか零さずにすんだが、いきなりのことで心臓のバクバクが止まらない。
ゆっくり紅茶をテーブルに戻して、エステルの話を聞く。




「べ、別に、好きな人は……」
「そうなんです?私、てっきりあの騎士の方かと思いました」




『あの騎士』とは、俺の護衛を担当している騎士で、名前は『ユーリ』。
特徴としては美形顔で綺麗な長い黒髪。
騎士のくせに、らしくない怠けっぷりの態度。
でもいざという時凄く頼りになる、凄く不思議な人であり……俺の恋人でもある。

誰にも内緒だけど……。



「…俺、一応……婚約者いるし」
「そうですけど、いいじゃないですか。ちょっと思うくらいなら」
「……そういうエステルはいるの?」
「私です?もちろんいますよ」
「そっか……」




エステルにだって婚約者がいるのに。
勝手に親に決められた相手だけれども。




「ルークも恋をしてみるといいです」
「うーん…」
「恋をすると世界が変わって見えてきますよ」
「そう…」
「それに、未来が少し変わると思います」
「未来…?」




そこまで言うと、エステルのお付きの騎士が声をかけてきて、午後のお茶会は終わってしまった。
「また来週です」と言い残し、騎士と一緒に歩いていくエステルの顔はとても幸せそうで。
そこですぐに、エステルがその騎士が好きなんだと気付いた。

その様子をしばらく見送っていると、ユーリも声をかけてきた。




「さ、おじょうさまも戻りますよー」
「………」
「おーい、きいてるか?」
「聞いてるし、おじょうさまじゃなくて……その…」
「ああ、悪かった。ルーク」
「……」




二人きりの時は名前で呼び合う事を約束してる。
名前を呼んでくれた事に嬉しく思いながら、ガタッと席を立ち、中庭を通って自室へ向かう。

ユーリとの二人きりの時間。

けれども、さっき言ったエステルの言葉がユーリの事よりも占めて、頭の中でリフレインしてる。


『未来が変わる』


エステルの今後の未来が変わったというのだろうか…。

自分はこのまま親に決められた婚約者と、好きでもないのに結婚して一生を終えるの……?

俺にだって好きな人が………

ユーリがいるのに………


でもそんな事、許される事じゃない。
でも……




「どうかしたか?」
「………」
「ルーク?」
「…エステル、好きな人いるんだって」
「ああ、フレンか。あの二人、結婚するらしいぜ」
「え、でもエステルにはヨーデルが…」
「そこは二人の頑張りが実ったってとこだろ」




そっか。
エステル、頑張ったんだ……



俺も………
いいの、かな……?



ちらりとユーリの顔を見て、でもそんな事も言えずに顔を背けた。




「……俺達も」
「え?」
「少しの未来に賭けてみるか?」
「ユーリ………、うん……!」




まさか。
まさかそんな事を言ってくれるなんて思っていなかった俺は、嬉しくてユーリの前でポロポロと泣いてしまって。

そんな俺を、ユーリは優しく涙を拭ってくれて、その指が唇に落ちてきた。

涙目でユーリの真剣な瞳を見て、幸せで幸せで。

ゆっくり目を閉じて、ユーリとの誓いのキスを受け入れた。





幸せの奇跡゚*。



翌年、ルークの結婚式典が行われた。

ルークの隣には親に決められた婚約者ではなく、黒髪の騎士の姿があったとか。










――――――――――
たける様より頂いた相互記念です。
お嬢様なルークと騎士なユーリの素敵な恋模様です!
勢い余って結婚までしちゃった!
さすがたけるさん。
私の好みをよく分かっていらっしゃる。
二人には幸せになってほしい……!
いえ、絶対幸せになるんです!

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