戴き物のお部屋
□不調和音
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「はい、でわルーク隊長は本日午後からお休みします。」
「「はーい。了解でーす」」
「え?は?おい…ユルギス何言って…」
「午後から有給の隊長は素早く私服に着替えておかえりください。」
「「おかえりくださーい」」 「え?あ、ちょ…こら待ておおおおおお おおおおおおおい!!!!!!!!!」
ある晴れた午後。帝都勤務になったルーク隊の日々は穏や かであったが、その日は少し変っていた。シャスティルとヒスカに無理矢理更衣室に拉致られて騎士の服を脱がされたルークは、しぶしぶ私服に着替えて久しぶりに太陽が高い時間の下町を歩きだした。
不調和音【TFSV 外伝】
急に副隊長の権限により午後から休みを取らされたルークはぶらぶらと下町を歩いた。 普段この町を歩く時は任務又は見回り、もしくは仕事が終わった夜の時間だけだった。 久しぶりに明るい時間にあるくこの下町は活気がありルークはこんな下町の賑わいが大好きだった。下町の人々もルークだと気が付くと気軽に声をかけたり、何故か食べ物を貰ったりしてしまう…それだけ下町の人からの信頼は厚い。しかし、このままぷらぷらと歩いていたら、物資がそれほど裕福でない人達から物を貰う為に歩いているのと変わらないので、仕方なくユーリの家に行くことにした。フレンの家でもよかったが、フレンは今日珍しく有給を取っていて休み。休みの日にまで上司の顔を見るのは可哀そうだと思いユーリの家にしただけ…らしい本人曰く。
「そういえば、明日は俺の隊になってからの初の飲み会だったな…くそっ…今日中に終わらせたい仕事があったのに…ユルギスのやつ…」
めったにルークに対して反抗をしないユルギスからのめずらしい強硬に驚いてしまい、 今回は負けてしまったが…次は負けないと心に誓いながら何度も歩いたことのある道を歩くと、人ごみの中によく見かける黒い狼の姿を見つけた。
「あ…ユーリじゃん、おーいユー……リ……」
ユーリの家に行こうとしていたので呼び止めようと声を出したが、その声は途中で途切れてしまった…ユーリの隣に居た女性を見て…。ユーリの交友関係はほぼしっているつもりだった。後ろ姿だけだけど…あんな女性みたことがない…ヒールでも履いているのだろうか、ユーリとほぼ同じ身長。まっ白いワンピースがよく似合う…。ユーリと並んで恥ずかしいのか頬がほんの少し赤く染まっているところがまた可愛らしい。
「だ、誰だよあの人…」
自分の知らない女性…自分より女らしくて綺麗な人。ユーリはその女性といて楽しいのか心の底からの笑顔を見せて道を歩いて行く。ルークの心の中で何かが動いた。帰ろう…そう思って来た道を戻ろうとした時、ルークの身体に冷たい水が降り注いだ。
「あら…ルーク隊長じゃない…!!ごめんなさいね…私うっかりしてて…」
「え?あ…えぇ?」
目の前で謝ってきたのはユーリがお世話になっている宿の女将さんだった。水を道に撒いていたところうっかりして ルークに掛ってしまった。 ルークの身体はびしょぬれで家に帰ろうにも帰れない状態…。特に自分はこれで帰っても問題はないが、あとで騎士団の仲間に知られたら正座をさせられてお説教コースは間違いない。どうしようかと困り果てていると女将さんがルークの手を掴み家へと招き入れ、そしてそのままユーリの部屋へと連れ込んだ。
「え?あ…ちょ、女将さん!?」
「さっきユーリ出かけたらからまだ帰って来ないだろうし…シャワーでも浴びな。服はそうだねぇ…あ、この前ユーリに買ったけどサイズが大きすぎて着れなかったやつがあるからそれを着なよ。あんたならワンピースになるだろうし」
「え?あ…はい…」
女将さんはさっさと下の階に下りて服を取りに行ってしまった。多分このまま帰ったら女将さんにも怒られることは目に見えていたので、しぶしぶルークはユーリの部屋でシャワーを浴びることにした。シャワーを浴びて出てきたルークは部屋に用意されていたシャツを着てみると確かにユーリが着ても大きいもので、ユーリより小柄なルークが着ると少し短めのワンピースになってしまうものだった。しかもかなり大きい為気をつけていないと肩からずり落としてしまいそうだ。鏡を見てみるとやはり先ほどの女性の方が同じ白のワンピースでも…似合っている。自分には鎧や男性の服が似合うとつくづく思ってしまい、何時も着ている服を着ようと思ったが、何故か何処にもなくきっと女将さんが気をきかせて洗濯してくれているのだろうと思った。
「どうやって帰ろう…流石にこのままはな…まぁ、いいか…」
することもなくユーリのベッドに寝転がっていると階段を上がってくる音が聞こえたので耳を澄ませてみると女将さんの足音ではない…となると…
「ルーク…水掛けられたってホント……………」
「あ…ユーリお帰り。」
ルークを見た瞬間固まっていたユーリだったが、深いため息をつくとドアを閉めてまじまじとルークの姿を見ていた。
「な、何だよ…」
「お前…その格好で外出てねぇだろうな?」
「流石にそこまでしねーよ…」
「ならいい…」
ユーリは外に出ていたついでに買って来た食べ物をテーブルに置いている姿を見てふと、先ほどの女性のことを思い出してしまった。別にユーリの交友関係にとやかく言う義理などはないが…気になってしまってしょうがない。
「ユーリ…さっき綺麗な女の人と歩いていたけど…誰だ?」
「………何のことだ?」
いつもはルークの目を見て話すユーリだったが…何故か今日は目を合わせようとしない。それにどこかよそよそしい感じがする。
「俺見たんだからな…金髪の人と歩いてるところ…誰だよ…あれ…」
「金髪って…あぁ…あれは………………まだ、ナイショだ」
途中まで言いかけたが何故かやめてしまった。隠し事をするユーリが気に食わないのか 、ルークは頬を膨らませてユーリの背中に飛びつきユーリの首に腕を回して締めはじめた。
「なっ!!ルークッ!!」
「俺に隠し事するとは…良い度胸じゃねーの…」
逃げられないように足を絡めながらぐい ぐいと力を入れるが、苦しそうな顔をする反面ユーリの顔は真っ赤になっていく。
「わーかった!!言うから言うから!!離せっ!!!」
その言葉でルークはやっとユーリを解放したが、何故かユーリはルークから距離を置こうとする。その行動がますますルークの機嫌を損ねていった。
「あの人はその……………フレンに頼まれ たんだよ。街を一緒に歩いてやってくれって…」
「何でフレンが?今日は休みだから自分で行けばいいだろ?」
ユーリの説明にまだ納得がいかないのか不貞腐れた顔をしながらルークはユーリのベッドに座るが、ユーリはルークから相変わらず目線を逸らせる。
「ところでルーク…お前その下……下着と はちゃんと履いてるだろうな?」
「女将さんが洗濯中だから履いてるわけねーだろ……」
「おいおい…勘弁してくれよ……」
ユーリは深いため息をついてルークから一番離れた壁にもたれ掛かる。いつも傍にいるユーリが何故か距離を置 く…それだけでルークは苦しくなっていった。
「……なぁ、ユーリ…俺お前になんかしたか?」
「は?」
「俺…別にお前がどんな女性と付き合おうとお前の勝手だけど……お前がそんな風に……離れるのは……俺…いやだ…」
「ルーク……」
いつもは強気でどんなことでも涙を見せないルークだったが、今日は女の子らしくぽろぽろと涙をこぼし始めた。
「ごめ…ちがう…俺…お前の横…取られたくねーの…他の…綺麗な人に…」
ルークの目からは涙が止まらない。この感情は嫉妬。それはルークは解っているけど…まだ恋人でないユーリを縛りつけたくない…告白はされた…けど…関係は…そんな不安定な関係が苦しくて…涙が止まらない。ずっと離れていたユーリがルークの隣に来ると優しく抱きしめてルークの背中を優しく撫で始めた。
「ばか…俺にはお前だけだ…だから安心しろ…浮気とかそんなんじゃねぇし…お前に今日離れていたのは…その…自分を抑えれそうにねぇから…」
「………ユーリ何言ってるんだ?」
涙が止まらないその瞳でユーリを見上げると、珍しくユーリの頬が真っ赤になりまた深 いため息をついた。
「お前…天然もいい加減にしろよな…つまり…こういうことだ…」
「え?ちょ…ユーリッ!!!んっ…ふぅ…」
急にユーリはルークの唇を塞いだ。軽いキスは何度か経験はあった…けど、今回のは違う…もっと深いキス。ルークの口にユーリの舌が侵入しルークの舌を絡め取る。始めての行為にルークは驚いてしまい反抗したくても身体が言うことをきかずただユーリのなすがままになっていると ユーリはやっとルークを離した。
「ぷはっ…ユーリ…何するんだ…!!」
「いいか…俺だって男だ…男には男の事情ってもんがあるんだ…これにこりたら今後そんな男をさそうような格好はやめろ…むしろ止めてくれ心臓にわりぃ…」
「よくわかんねーけど…解った…」
「ほんとかよ…」
苦笑いをしながらユーリはルークの頬に優しくキスをした。そのキスはいつもの優しいユーリで…ルークのよく知るユーリだった。そしてそのあと何故かユーリは慌ててト イレに駆け込んだが…何故トイレに駆け込んだかはルークは理由を知らなかった。
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やったあああああああ!!!!
あいらぶ那月さんから相互記念いただいた!
ルークにまんまと欲情しちゃってるユーリさん素敵。
無自覚ルークたん可愛過ぎである。
那月さんはやっぱすごい人です。
俺、幸せです。