戦国BASARA

□望まざる望み
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伊達と武田は今、同盟を結んでいた。
理由は織田の勢力が、目に余る程に拡大していたからだ。
お館様は苦渋の決断だったとおっしゃっていたが、某にはとてつもない幸運だった。
伊達の主こと伊達政宗と某は恋仲であったからだ。

「政宗殿」

情事の後、すぐにぐっすりと眠ってしまった政宗殿の名を呼ぶ。
某は幸せ者だ。
この戦乱の世、恋人と一緒に居られること自体が奇跡的に思える。
しかも、元々は敵であったのだから尚更だ。
政宗殿の身体に手を回す。
戦の時は気づかなかったが、政宗殿は思っていたより小さく、かといって華奢でもない。
武士の身体だ。
無駄がない。
その時、ゆらりと自分の中で何かが蠢いた。
某はそれの正体を知っている。
独占欲。
いつも情事が終わった後に揺らめく暗黒の炎。
最初の頃はこれが何なのか分からず、不安になったりした。
が、時が経つにつれ明確にはっきりと自覚が出来るようになった。
天へと昇る竜が如く、気高く輝く政宗殿。
その穢れなく清らかな翼をもぎ取り、どこまでも愚かで貪欲な虎のいる地上に、引きずり堕としたくなる。
想像する度にそんな思いが心を支配する。
しかし、そんなことは本当に望んでなどいない。
某はすぐに頭を振り、考えを打ち消した。
政宗殿を傷つけたくはない。
だが、内に秘めた情火は完全に消えることなく、某を苦しめる。
誰にも触れさせたくない、誰にも会わせたくない、誰にも見せたくない。
気が狂いそうだ。
いっそのこと狂ってしまったならば、どれほど楽であろうか。

「政宗殿」

静かに囁く愛しい貴殿へ。
されども目覚めぬ愛しい貴殿。
某もそろそろ眠りに堕ちよう。
そなたと堕ちる、至福の夢へ。


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