戦国BASARA
□ある日のこと
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野菜奉行。
それは独眼竜こと伊達政宗の右目、片倉小十郎の裏の呼び名だ。
だから、少しでも野菜の好き嫌いをすると、鬼のように怒る。
今回も野菜のことで、四国の風来坊こと長曾我部元親と口論(一方的なのだが)になり、怒りを爆発させていた。
「新鮮な野菜を喰わねぇたぁ……なめてんのか?」
「なっ、なめてなんかねぇ…。ただ、俺は野菜がにが……」
「にが?」
先の言葉を濁す長曾我部に追い討ちをかける。
暫しの沈黙が二人の間を流れる。
そして、沈黙を破ったのは真田幸村の雄叫びだった。
それも只の雄叫びではない。
何かが折れたり潰れたりする音がその声ともに聞こえてきたのだ。
その何かが折れた音を聞いた瞬間、小十郎の表情が一変した。
「この音は……葱……」
みるみると形相が変わっていく小十郎を見て青い顔をした長曾我部が後退りを開始する。
そして
「真田ぁ――――っ!!!」
脱兎の如く畑へと向かう小十郎。だが、一足遅かった。
畑は見るも無惨な姿へと変貌をとげていた。
一方、犯人である真田の姿はなく、そこにはガクリと膝をつき両の肩を落としている小十郎だけがいた。
「ん?どうした小十郎」
散歩中だったのだろう、その惨劇があった場所に主である伊達政宗が立ち寄っていた。
「…政宗様……畑を御覧ください………」
政宗は言われた通りに畑を見やった。
「…もしかして、真田か……?」
項垂れたままうなずく小十郎。
其れを見た政宗は何故か笑いだした。
「くっくっくっ、そうかいそうかい、真田は此所を襲ったのか」
くつくつと笑う政宗の顔を見た小十郎は驚いて政宗のほうに顔を向けた。
それに気付いた政宗は言った。
「いや、先程のことなんだが、ちょっとした賭けをしてな"小十郎が怒るようなことを5回したら、犯らせてやる"とな」
「何故そのような賭けをなされたのです政宗様!!」
怒る小十郎に政宗はまた笑いだした。
「悪いな、小十郎。実はお前が本気で怒っているところを見てみたくてな。それでだ」
唖然としている小十郎を横目に、政宗は去って行った。
それから暫くの間、小十郎は寝込んでしまったのであった。
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