戦国BASARA

□渡る橋にて
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不思議だ。
自分の身体を見ながらそう思った。
俺様は死んだ。
殺されたのだ。
なのに怒りという感情がわかない。
怒りだけではない。

哀しみも

悔しさも

憎しみも

絶望も

全てが止まってしまったようかのようだ。
俺様は少しの間、己の骸を眺めた。
どれぐらい時がたったのだろうか。
真田の旦那と大将が部屋へと入ってきた。
旦那は遣り切れなさそうな顔をしていた。
大将も少し浮かない顔をしている。

それでも

何も感じない。

旦那たちはすぐにいなくなった。
新しい忍頭を決めるのだろう、多数の忍が集まる気配を感じた。

―嗚呼、俺様死んだんだ―

今更ながら自覚する。
けれど、やはり何の感情もわかなかった。
少しの間、静寂が俺様を包んだ。
だが、その静寂もあまり続かなかった。
障子が音をたてずに開いたからだ。
そして

そこに立っていたのは

小太郎だった

小太郎はゆっくりと音を忍ばせ、部屋へと入ってくる。
その顔は何時にも増して表情がなく、まるで死人のような顔色になっていた。
少しずつ俺様の亡骸に近づき、その横へと座り込む。
暫の間、まるで時が止まったかのようだった。

「………」

小太郎が何かを言ったような気がした。
すると、両頬に伝うものが。
それは止めどなく小太郎の瞳から溢れだし、その頬を濡らした。

それを見た時

止まった時間が

動き出したような

気がした



様々な感情が溢れ出てくる。



不思議だ

何も感じなかったのに

今は

違う



俺様は小太郎の小刻みに震える肩に手をのせようとした。



それは叶わなかった



あぁ、そうか

俺様

死んでたんだ



そう思ったとき

流れるはずのないものが





流れ落ちた





.

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