Others
□ごめんな
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「のぉ、悟空や」
「ん?何だぁ、じっちゃん」
「お前がワシのとこに来てから、もう9年にもなるのぉ」
月が出始める少し前。
まだ幼い顔の少年と、一人の老人が縁側に座って空を見上げていた。
外の風は優しく頬を撫で、少年はその風が悪戯に揺すった髪の毛をかき上げている。
「そっかー。オラ、あんま歳とか分んねぇなぁ」
「ハハッ、悟空らしいと言えばそうかもしれんな」
ぐしゃっと頭を撫でられて、少年は少し頬を染めながら笑っていた。
老人は目を細めながら、穏やかに頬を緩ませる。
実の家族のような…そんな仲睦まじい雰囲気の二人に、夜も段々と更けていった。
「ほれ、悟空。もう寝る時間じゃ」
「おぅ!じゃあおやすみ、じっちゃん!」
「あぁ、おやすみ悟空」
老人に元気よく手を振ると、少年は家の中へと入っていく。
その後で老人は悲しく俯きながら、小さく溜息を吐いた。
「………まさか、こんな事になるなんてのぉ…」
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