Others
□ごめんな
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“悟空や。満月の夜は大猿の化け物が出る。家の中に居れば安全じゃ”
「(ほんとにそんなの居んのかなぁ?…ま、いっか。寝よ、寝よ!)」
(悟空。今日は月が綺麗じゃのぉ)
(ほんと、……だ…)
(悟空?)
(…ぁぁあああ゛!!!)
「……っ!!」
「Zzz……」
「(…、何とも…嫌な夢じゃ……。どんな運命が待っておるのかのぉ…悟空?)」
老人の撫でる手は震えていて、それでもしっかりと少年の頭を撫でていた。
少年の寝息にふ…と息を吐き出すと、キセルに火を点ける。
外はいくらかまだ暗く、起きるには早い時間だ。
「ぼちぼち、朝飯の支度をするか。また足りなくなったら、悟空が可哀相じゃからな」
先程の手の震えはなくなり、食材を探しに行く老人。一体何を恐れ、何に嘆いているのか。
それは、規則正しい寝息を立てる少年が知る余地もなかった。
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