「あ!ジローと侑士発見!!おーい!」
「あぁ、がっく…!?」
「…マジマジスッゲー!!何それどうしたの!!」
フフンと自慢げな表情の岳8斗はクルリと一回転し、スカートを翻らせた…そう、スカートを…
「お前そういうの(セーラー服)よく似合うよなぁ〜」
「順応すんなやジロー!!」
「え〜かわEジャン?」
「あっかん!オレの可愛いがっくんに変な虫でもついたらどないすんねん!!」
そう言って忍足は岳斗の腰を引き寄せる。岳斗はと言えば、嫌がる様子は勿論なく、嬉しそうに目を細めていた。
人目をはばかって欲しいものだ…なんて、人の事は言えないがご馳走様…。
「ぁ…あの…向日先輩…」
この声は…
「日吉!」
バッと声のする方に振り返ったがそれらしき影はない。
…壁の後ろに隠れてる女の子以外は。
大きなリボンを頭につけて、恥ずかしそうにこちらを見ている。
どうしたんだろう?あぁ、忍足のファンとか?
「おぅ日吉、何やってんだよ!早くこっち来いよ。」
岳斗が話しかける方へ視線を向ける。どうみてもリボンの娘に話しかけてる。
「無理ですっ!!何でそんな普通に歩けるんですか、恥ずかしくないんですか!?」
俯いて真っ赤になり、いやいやをしながら必死に言い訳している女の子…
でもこの声って…
「日吉?」
恐る恐る彼女に近付いて見る。
「ぇ、いやっ!?こ、来ないで下さい!!」
よし、行こう。間違いない日吉だ。歩く足を速め…もとい走り、たじろぐ日吉が逃げないように素早く腕のをつかむ。
「なんで逃げようとするかなぁ、さすがに傷ついちゃうよ?オレ。」
なんて、嘘だけど…
「す…みません…」
シュンと頭を垂れた。
うーん、素直だ…いつもこんな感じなら可愛いんだけどな。
「声に出てますよ…どうせ可愛げなんかないですよ。」
失態…でも本心。オレから伝えるだけじゃ意味ないから。とはいえ、顔が見えないのは残念だなぁ…
「日吉〜顔上げて?」
首を左右に大きく振る。
むぅ…頑固。ちょっと意地悪したくなった。
「じゃあこのまま模擬店回ろっか!」
「え!?だ、駄目!!」
バッと顔を上げた。
ちゅっ♪
「……なっ!?」
成功。
やっと顔が見れた。
切れ長の目がアイメイクによりいつもの倍にみえる。恥ずかしさから上気した頬、潤んだ瞳…
「…ぁあもう!!」
独占欲が働くくらい、不安になるくらい可愛い。
腕を引き寄せてグッと抱き締め、首筋に顔を埋めた。
「……かわいぃ…」
香水のような甘ったるい香りに混ざってふわりと香る日吉の匂い。
やっぱり着替えてもらおう。
侑士じゃないが、他のやつに見られるなんて癪にさわる…
「なぁなぁ…オレらって空気?」
「言ったら負けやでがっくん…あんなん放って店見て回ろか?」
「うん…(ちょっと羨ましい)」
拗ねたような岳斗の手を繋げば握り返された。
幸せそうな2人は自分たちの世界を築いていた。
取り敢えずまぁ…ご馳走さま…
end