Shaman King

□素晴らしき河川敷
1ページ/1ページ



『はい』

真っ赤な夕日の中で
綺麗にラッピングされた
箱を渡された。
おそらく、例のソレだろう。

「えーと…」

河川敷をランニング中。
絶対くれないだろうと
半ば諦めていたオレの想い人が
少し頬を染めながら
オレに手を伸ばしている。

中身はチョコとみて
間違いはなさそうだ。

「毒とか入ってねェよな…?」

でもやっぱり信じられない
自分が何処かにいて。
気付けばくだらない
意地を張っていた。


いつもみたいに
殴られるかなーなんて
ちょっと身構えてたら
何故か下を向いて震え始めた。

「お、ちょっ!何で泣いてんだよ!?ごめんって!ジョーダンだよ!」

予想外の展開に驚きが隠せずに
思わず震える細い肩を掴んで
引き寄せていた。

『ホロホロの馬鹿ァ…』

「ごめんって言ってんだろ…」


なんかすげーいいふいんき。
このまんまキスとか…

『死ねーー!!』

「ぐはぁっ!」


抱き寄せていた小さな体は
いつの間にかオレから
離れていて。
っていうかオレが
離れていってて。


『義理だもんねーだ!』

でっかいあっかんべーを残して
オレが今走って来た方向に
走って行った小さな背中を
見送ったあと、
押し付けられたチョコの箱を
乱暴に開けていく。
先程まで綺麗に箱を包んでいた
包装紙がパラパラと
地面に散らばった。


「これが義理かっつーの」


ハート型のチョコに
メッセージカード付き。
四つ葉のクローバーの
かわいらしいメッセージカードには

"一緒にフキ畑作ろうね"

と性格に似合わない綺麗な字。


ちょっと白っぽく変色した
チョコレートを口に放り込むと
また走り出す。

帰ったら精一杯馬鹿にしてやる。それで言ってやるよ。




「お前が好きだー!!」


オレの叫び声は川を伝って
夕日に吸い込まれていくようで。

夕日はやっぱり
沈む事を知らないらしい。












バレンタイン企画
"素晴らしき河川敷"


.


[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ