All The Way
□The Darkest Night
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夜の帳を明るく照らす月。
光り輝く星達。
ひっそりと佇む深い闇。
ひとすじの風が、森の中を吹き抜けた。
深い森の中に村があった。
小さな村で、その村の近くには綺麗な大きい湖があった。
村人達は皆、木で作った簡素な家に住み、畑仕事で生計を立てていた。
平和な村だった。
その村に、一人の旅人が現れた。
紅の長い綺麗な髪、整った顔立ちの少女で、気の強そうな上品な顔をしていた。
全身黒ずくめで、腰のホルスターには、右腰には綺麗な模様が施されている銀色の銃、左腰には黒く輝く銃が納められていた。
妖麗な顔立ちの少女は、十代後半頃に見え、左手首にはコンパクトコンピュータのような物を付けていた。
それは、夕日が現れ、辺りが真っ赤に染まった頃だった。
「すみません。こんばんは」
その村人は、澄んだ声色で、村の傍にある畑で畑仕事をしていた村人に声をかけた。
村人は慌てて持っていた畑仕事の道具を取り落とす。
「あっ、はい、何でしょう?」
村人は落とした道具を慌しく拾い上げると、旅人を穴の開くほどじっと見た。
村人の目が驚きで見開かれる。
「ひょっとして、旅人さんですか?」
「はい」
旅人がそう答えた瞬間、村人の顔がパッと輝いた。
「ようこそ来られました!実は最後にあなたのような旅人さんが訪れて来られたのはもう四ヶ月くらい前なんですよ!」
村人の声が嬉しそうに弾む。
旅人は小さく微笑んだ。
「そうなんですか。できれば、今晩だけこの村に泊めさせて頂きたいんですが。久々に屋根の下で休みたいので」
旅人がそう遠慮がちに言うと、村人は勢いよく頷いて、旅人にここで待つようにと言うと、駆け足で村の方へ走って行った。
やがてしばらくすると、その村人はその村の長のような老人を連れてやって来た。
「こんばんは。私はこの村の長です。私どもの村に泊まりたいと聞いたんですが。私どもの村でよければ、どうぞ泊まって行って下さい」
長は人のよさそうな笑みを浮かべて言った。
旅人も小さく微笑むと、礼儀正しく頭を下げた。
「ありがとうございます。助かりました」
長はニッコリと笑った。
「あなたのような旅人さんがいらっしゃるのは、しばらくだったんです。だから、皆はしゃいでるんですよ」
長は困ったように笑った。
旅人も温かい笑みを浮かべる。
「光栄です」
「宴会をしようときかないんでね。開きたいと思うのですが、どうでしょうか?」
旅人は上品にニッコリ微笑んだ。
「喜んで」
その夜。
村は久しぶりの旅人の来訪とあって、村中で盛大に宴を催した。
旅人は手厚い歓迎に快く応じ、村の中央にある長の家のリビングで食事をしていた。
こじんまりとした、でも木の温かみが感じられる家だった。
リビングも広く、部屋には木独特の温かい香りが鼻をついた。
村の重役達が集まって、村の女性達が腕をふるった豪華なご馳走を次々と長テーブルへ並べる。
旅人はその度にきちんと礼を言っていた。
旅人は長テーブルの一番端っこ、長に一番遠い席に座った。
「旅人さんはこれまでどれくらいの旅を?」
旅人の左斜め前の村人がフォークとナイフを動かしながら、興味深そうに聞いた。
「あんまり覚えてませんね。ちょくちょく家に帰っているので」
旅人は人懐こい笑みを浮かべながら、歌うように言った。
「やっぱり旅が厳しいですか?」
「そんなことありませんよ。してみると、楽しいですし、いろんな発見があって面白いです」
村人達は口々に旅人に、旅のことや体験談を聞いたりして、穏やかな時間が村の中を流れていった。