All The Way
□The Game
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夜の帳もおりた深夜の街。
それは、カジノとギャンブル達が主役の舞台だった。
街のあちこちでネオンが光り輝き、人々は富と自由を弄びながらカジノへと足を運ぶ。
高級なスーツに身を包んでいる者。
派手なドレスで着飾っている者。
宝石を煌かせている者。
夜の街はまさにカジノ一色だった。
夕方をとっくのとうに過ぎて、夜10時をまわった頃。
その街には、カジノが集まる一画があり、そこでも一際目立っていたカジノがあった。
何百色ものネオンで照らされ、大理石の壮大な建物が目に眩い。
常連達は誇り高く中へ入り、初めての者はそのあまりの壮観さと美しさに足を止める。
その中に、一人の少年がいた。
セピア色のさらさらした髪、ダークブラウンの瞳の、綺麗な顔立ちの少年だった。
まだ10代後半頃らしく、横顔には幼い面影が見られる。
華奢な体で手足は長く、ジーパンに黒いタンクトップを着て、黒色の上着を着ていた。
茶髪の少年は、カジノの建物を興味がなさそうに一瞥すると、途中で立ち止まることなく中へ入った。
茶髪の少年はガラスのスイングドアを押し開け、贅沢な赤いカーペットの上を歩く。
そして、スロットマシンの騒々しい音やカードをシャッフルする小気味よい音には目も向けずに、ただカジノの賭博室をすいすいと歩いて行った。
茶髪の少年は、賭博場の騒音、人々の喧騒や歓声を無視して着飾った群衆の間を無表情に縫うように歩く。
彼は躊躇うことなく両替窓口へ歩み寄ると、ポケットの中から何枚かの札束を取り出した。
格子の奥の両替係には目もくれずに、茶髪の少年は目を細めてカジノの中を見回していた。
やがて、両替が終わると、茶髪の少年は軽い足取りでブラックジャックのテーブルに腰をすえた。
九、十、ステイ。
ディーラーは十五。
茶髪の少年の勝ちだ。
キング、四。
ディーラーのアップカードは六。
やはりステイ。
ディーラーのバースト。
クイーン、エース。
また茶髪の少年の勝ちだ。
茶髪の少年は微かに微笑む。
ディーラーが交代した。
しかし、茶髪の少年は不意に顔を上げた。
腕ならしは十分だ。
「そろそろ場所を変えようかな」
茶髪の少年は立ち上がって自分のチップを集め始めた。
始めたときの二倍以上にはなっていた。
運が傾いてきたのかもしれない。
「なら、キーノなんかどうです?今人気ですよ」
茶髪の少年は綺麗に微笑む。
「そうですね」
茶髪の少年は涼しげな表情で集めたチップの重さを確かめると、あとを振り返らずに台を離れて行った。