All The Way

□She is.
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人は、必ず何かしらの仮面を持っている

友人への仮面

クラスメートへの仮面

教師への仮面

同級生への仮面

近所への仮面

兄弟への仮面

両親への仮面

世間への仮面

国への仮面

善への仮面

悪への仮面

自分への、仮面

仮面は、多く持った方がいいということではない

仮面は、少なく持った方がいいということではない

誰でも、仮面を持っているということである

しかし、時に仮面を一つも持たない者がいる

それは、弱く

それは、強い

それは、醜く

それは、美しい

それは、痛ましく

それは、愛らしい

それは、この世界で1番非力で

それは、この世界で1番協力な仮面










She is.














涼しい風が行きかう町の人々の間をすり抜けていく、休日の昼下がりの午後。

それは、いつもと変わらぬ平穏な1日だった。

町の中央にある市場にはいつもより活気が溢れ、市場にやって来た人々もキラキラと輝いていた。

町の大人達は買い物カゴを片手にぶら下げて忙しそうに色々な店を回り。

そんな大人達に手を引かれながら、はしゃいで市場の賑やかな雰囲気に顔を輝かせる幼い子供達。

観光客もその賑やかさに圧倒されながらも楽しそうに笑みを浮かべ。

町の娘達はいつもより少しお洒落をして友人や恋人達との休日を楽しんでいる。

人々の真上には、雲一つない真っ青な青空が広がっていた。

ここは、山に回りを囲まれている大きな町。

自然に囲まれてはいるが、この町を囲んでいる山を越えたところにこの辺りでも1番近代化されて巨大な都市があるせいか、人通りも多く、一年中賑やかな町と行っても過言ではない。

都市暮らしに飽きた人々がここへ移り住んだり、都市へ向かう人々が休息としてこの町に滞在する旅人や観光客たちも少なくない。

町は近代化こそされていない、いわゆる田舎町だが、綺麗な空気が町中に澄み渡り、町の風景はとても美しい。

町はレンガ作りで、中央市場の近くにある中央広場を抜けた住宅街には、小さな可愛らしいレンガ造りの家々が立ち並んでいた。

ミアはこの町が大好きだった。

彼女はこの町の中央市場の一角にある、町でもけっこう人気のカフェテリア、『セシリア』の店員である。

この店のマスターがミアの母親の知り合いらしく、学校が休みの時やヒマな時はこうやって手伝いに来ている。

ミアはカウンターにもたれて、今このカフェにいる一人の客をチラッと見た。

長いブロンドの髪、淡い碧眼、ハッとするほどの綺麗な顔立ちの少女だった。

かれこれ何時間くらいああやって町を眺めているのか。

開店した直後にこの少女が入って来たのは覚えている。

開店はここは朝の九時からだ。

ということは、もう三時間近くもここにいるということである。

歳は自分と同じくらいの十六、十七歳頃。

白色の高級そうなワンピースに身を包んでいる、上品そうな雰囲気のする少女だった。

店内は白色と淡いピンク色を基調としていて、ミア達の年頃の娘たちが好きそうな飾り付けだった。

白い小さなテーブルに、レースがついた可愛いテーブルクロス。

少女は外の市場の様子がよく見える窓際に座って外を眺めていた。

「ミア。お願い」

ふとカウンターを振り向くと、マスターのメアリさんが自慢の腕を振るった美味しそうなケーキの乗ったお皿を紅茶がのったお盆を差し出していた。

「はいっ」

ミアはお盆を受け取ると、少女の座る席へと近付く。

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