All The Way
□The Darkest Night
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数秒後。
旅人はトリガーから指を離し、ゆっくりとホルスターに二丁の銃を戻した。
村人達は一人残らず無残な姿で床に倒れていた。
リビングの床や壁が一瞬で赤に染まった。
旅人はそれを興味が無さそうに一瞥すると、ひっくり返されて返り血を浴びた長テーブルを起こして、その上に左手首にあったコンパクトコンピュータを静かに置いた。
自然にスイッチが入り、画面に男の顔が映った。
「よぉ。派手にやってくれたじゃねぇか」
ハスキーな声の皮肉ともとれる言葉に、旅人は事もなげに軽く肩をすくめる。
「けっこう簡単に片付いたわ」
「デザート食べずにいきなり銃をぶっ放すヤツがいるかよ。もったいねぇ」
「私、甘いものは嫌いなの」
「よく言うぜ」
旅人はため息をつくと、リビングの中をぐるりと見回した。
「ハイアラム」
「あいよ」
コンピュータの中の男の顔が消え、代わりに地図が映し出された。
「間違いないぜ。この村だ。旅人殺しの村」
旅人は慎重に部屋の中を横切って、部屋にある棚や壊れた家具の中を勝手に開けては調べ始めた。
「続けて」
「国の報告書によると、この村の周囲を通った旅人達が、この2年間、今まで一度も帰って来なかったそうだ。それで、ようやくおかしいと思い始めた国は、お前を差し向けた。結果‥‥‥」
『ビンゴ』
旅人とハイアラムの声が重なった。
「しっかし、国もマヌケなもんだな。フツー、気付くだろが」
「仕方ないわよ。こんな小さな村だもの」
「それにしてもよ、何であそこで撃ったんだ?他にもタイミングがあったろ?」
「なかったから撃ったのよ」
旅人はぴしゃりと言い放つ。
「どういう意味だ?」
旅人は小さくため息をつくと、立ち上がって隣りの部屋へ続くドアを勢いよく開けた。
銃弾で穴が開いている。
すると。
「!」
中から崩れるように、一人の男が長い猟用の銃を持ちながら倒れこんで来た。
胸に穴が開いている。
既に息がないのは一目で分かった。
「でしょ?」
「‥‥‥」
ハイアラムは沈黙で肯定した。
それから数分後。
旅人はもう諦めたのか、右手に綺麗な宝石が散りばめられた宝箱を持って戻って来た。
「残念。これしかなかったわ。どうやら、もう売ってしまったみたいね」
旅人は残念そうに肩をすくめる。
「まあ、あるだけマシじゃねぇか」
「まぁね。どうやら、この村人達は村ぐるみで、訪れた旅人を殺してはその旅人が持っていた貴金類やお金をとってたみたいね。そして商売人に高い金で売り飛ばしていた。それくらい貧しかったんでしょう。亡骸は湖の底ってとこかしら」
「調べねーのか?」
ハイアラムは意外そうに聞く。
旅人は乾いた声で笑った。
「まさか。国がやってくれるわよ。私達の仕事はこれでお終い」
「ご苦労さん」
「ありがと」
旅人は満足そうに答えると、左手首にコンパクトコンピュータを付けて、軽い足取りで長の家を後にした。