All The Way

□The Darkest Night
4ページ/5ページ

その村から、数百メートル離れた先に、車が一台通れるくらいに塗装された山道があった。

そしてその脇に、一台の黒い車が停められていた。

車高が低く、全体的に四角い型で、そんなに大きくない車だった。

もともと四人乗れるはずなのだが、後ろの狭い後部座席には荷物で埋もれていて当分使えそうもない。

旅人はトランクを開けて(トランクの中は綺麗サッパリ空だった)、その中に無造作に宝箱を投げ入れた。

そんな様子を見てハイアラムは一人、「‥‥汚ね」と呆れる。

旅人は左側の運転席のドアを開けて座ると、コンパクトコンピュータ(=ハイアラム)をいつもの定位置に置いて、車のエンジンをかけた。

「ハイアラ‥‥」

「あー、はいよ」

コンピュータ画面に突然パッと地図が現れる。

左端の方に点滅している赤い点が見えた。

「ここからじゃ、そう遠くないな。行きのルートとは逆のルートで帰るぜ」

「何で?」

「何でって、そりゃ、そっちの方が早いからに決まってんだろが。なるべくこの村からは早く出た方がいい。気付いたら大騒ぎになるからな。まぁ、朝方には着くだろ」

「えぇ。でもすぐに国の役人が来て、あの村も壊滅するでしょ。どっちにしても私達にはもう関係ないことよ。じゃあ、よろしくね、道案内」

「了解」

「‥‥動かない」

「‥‥アヴィレイアス。ギア入れろ」

「‥‥分かってるわよ」

アヴィレイアスが慣れない手つきでギアを入れると、ガタゴトと車が動き出した。













夜の帳を明るく照らす月。

光り輝く星達。

ひっそりと佇む深い闇。

ひとすじの風が、森の中を吹き抜けた。

次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ