All The Way
□The Darkest Night
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その村から、数百メートル離れた先に、車が一台通れるくらいに塗装された山道があった。
そしてその脇に、一台の黒い車が停められていた。
車高が低く、全体的に四角い型で、そんなに大きくない車だった。
もともと四人乗れるはずなのだが、後ろの狭い後部座席には荷物で埋もれていて当分使えそうもない。
旅人はトランクを開けて(トランクの中は綺麗サッパリ空だった)、その中に無造作に宝箱を投げ入れた。
そんな様子を見てハイアラムは一人、「‥‥汚ね」と呆れる。
旅人は左側の運転席のドアを開けて座ると、コンパクトコンピュータ(=ハイアラム)をいつもの定位置に置いて、車のエンジンをかけた。
「ハイアラ‥‥」
「あー、はいよ」
コンピュータ画面に突然パッと地図が現れる。
左端の方に点滅している赤い点が見えた。
「ここからじゃ、そう遠くないな。行きのルートとは逆のルートで帰るぜ」
「何で?」
「何でって、そりゃ、そっちの方が早いからに決まってんだろが。なるべくこの村からは早く出た方がいい。気付いたら大騒ぎになるからな。まぁ、朝方には着くだろ」
「えぇ。でもすぐに国の役人が来て、あの村も壊滅するでしょ。どっちにしても私達にはもう関係ないことよ。じゃあ、よろしくね、道案内」
「了解」
「‥‥動かない」
「‥‥アヴィレイアス。ギア入れろ」
「‥‥分かってるわよ」
アヴィレイアスが慣れない手つきでギアを入れると、ガタゴトと車が動き出した。
夜の帳を明るく照らす月。
光り輝く星達。
ひっそりと佇む深い闇。
ひとすじの風が、森の中を吹き抜けた。