Title
□お題(アウステ)
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昔の僕なら笑い飛ばしてた、ちゃちな運命論
でも、今はそれを信じたいと思ってる
だって、君が言う運命論だから
星回りのペガサスに乗せたちゃちな運命論を夢みる君が好きなんだ
‥‥ホント、何にも考えてなさそうなヤツ。
数秒の間僕はその同僚の後ろ姿をじっと見ていたけれど、やがて僕は、はぁ、と息を吐きながら天を仰いだ。
寒々とした冬空。
時々頬を撫でる冷たい地球の吐息。
今はもう真冬日和の12月。
今まで何年も生きてきたけど、今年ほど月日を流れるのが早いと感じたことはなかった。
今、僕たちは甲板に出ていた。
‥‥つまり、僕とステラ。
まぁ詳細は、先に甲板で昼寝してた僕をステラが目ざとく見つけて何故か居座って今に至るわけだけど。
僕はもう一度長いため息をついた。
そんな僕に気付いてか甲板から危なっかしく身を乗り出して海風に当たっていたステラが不意にこっちを振り返った。
さらさらの金髪が風になびく。
太陽の逆光のせいかアメジストの瞳がいつもよりキラキラと輝いていた。
「‥‥アウル、寝ないの?」
ステラが来るまで寝転がっていた僕だけど、ステラが来てからは上体だけ起こしてステラと同じように海を眺めていた。
だってステラのバカが海に落ちたら困るし?
困るってのはそれで怒られるの僕だから困るわけで。
しかもスティングとネオに怒られるのってムカつくし?
「どっかのアホが落ちないように見てんだよ」
僕はステラから一瞬目を逸らす。
「?」
風で聞こえなかったんだろう。
ステラは小さく首を傾げた。
僕は半ば呆れてステラから目を離すと、目の前に無限に広がる太平洋の水平線を見た。
何にもない、ただただ世界の果てまで続く青。
どこか人間を落ち着いた心地にさせてくれる海の音。
塩辛い海独特の香り。
ステラはもう十分海を見終わったのか、いつの間にか僕の隣りに来てちょこんと座っていた。
僕はそれに気付いてごろんと寝転がる。
「綺麗だね」
そう嬉しそうに言うステラ。
僕は横目でチラッと見た。
バカみたいに何にも考えてなさそうな顔。
一瞬、戦闘時のステラを思い出し、人ってこんなに変わるんだなって感心した。
まぁ薬のせいでもあるけど。
「あのね、」
「‥‥‥」
僕は重たい瞼を閉じる。
ステラの声とさざ波の音だけが耳に響いて心地良い。
「さっきね、思ったんだけど、変わらないと思う」
いつも慣れている、目的語が抜けたステラの語法に僕は薄目を開けて左横のステラを見た。
「‥‥何が変わらないって?」
ステラは薄目を開けた僕に気付かずに、目の前に広がる太平洋の水平線を眺めながら言葉を続けた。
「運命が」