夢の先へ

期待の先・後編
2ページ/2ページ



『――フリオニール。』
「…ぅわっディオニシュ?!」
『…………』
「……(や、ヤバい?)」



悶々としていたフリオニールのところに、ついにディオニシュが姿を現す。
不意に声を掛けられたため、咄嗟に声をあげてしまったが、そのせいで垣間見えたディオニシュの顔に影が落ちる。ゴクッ、と変に喉が鳴った。






「(お、漢になるんだ、俺…!)」



女付き合いの経験がまるでないフリオニールは、こういう時どう対処していいのか解らない。
しかし、それでもやらねば、と意を決したように心で叫ぶと、フリオニールはその場に土下座する勢いでバッと頭を下げた。



「ディオニシュ!酒のせいにするつもりはないが…本当に悪かった!
俺のことだ、どうせディオニシュにバカなことしてしまったんだろ…?」


深く頭を下げたまま、ディオニシュの言葉を待つフリオニール。
自責の念に捕らわれていた彼は、聞こえてきたディオニシュの声が意外に穏やかなことに驚いた。








『…バカなことっていうか…むしろ、嬉しかった。』
「……え?」
『フリオニールの気持ち、知れたから。』
「ちょ、ちょっと待て、俺、何を言った?」




思考が、追いつかない。
てっきり取り返しのつかないことをしてしまったと思っていたフリオニールは、混乱しかけている頭を振りながら、懇願するようにディオニシュを見た。
本当に、何を言ったのだろう。酒の影響を身を持って知り、もう二度と口にしたくないと苦々しく心で呟く。そんなフリオニールを尻目に、ディオニシュは楽しそうに口元を緩ませ、伏せるフリオニールの手を取った。







『…フリオニールは、私のことどう思ってる?』
「なっ!そ、そ、それは!」
『――それが、さっきの答えだよ。きっとね。』
「そ、そんな、いや!まさか!」
『あはははは!』



ディオニシュの言葉に、表情を暗くしたり、いきなり明るくしたり。
フリオニールは一喜一憂しながらも、一人で百面相をしているようだった。

それを見て笑うディオニシュと、それにつられて笑うフリオニール。






『(……好きだよ、私も。)』




二人を包む空は、すでに赤く染まっていた。












------------

「――お、仲直りできたみたいだな!」

「…まったく。世話の焼ける。」
「なんだかんだ言って、入る隙もないよなー。ちょっと悔しいぜ。」






バッツがジタンの背に乗り掛かり、さらにバッツの肩からスコールが顔を覗かせる。押し合いへし合いディオニシュとフリオニールの様子を遠目で見守っていた三人は、微笑ましい光景に安堵しながらも、一様に同じことを口にした。











(――でも、どこか もどかしいよな。)









.

前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ