混沌なる世界に光あれ

□混沌を貫く光
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最近の疲労から眠気を感じて止まなかった私は、玉座の上で頬杖をつき軽く目を閉じていた。少し一人にしてほしいと告げ、どこかへ歩いていったアエリアの言葉を疑わなかったことで 絶望を見るようになど露知らず。

アエリアもいろいろあったから一人で考えたいこともあるのだろう。そう考えた私はアエリアが戻るまで仮眠を取ろうとした。










「―――コスモスか。何かご用か?」



しばらく浅い眠りを繰り返していた時 閉じた瞼の向こうに眩い光を見る。軽く目を開けて訊ねれば、そこには輝かしい後光とは裏腹に暗い面持ちのコスモスがいた。
…嫌な胸騒ぎがする。







「だいぶお疲れのようですが、こうしている場合ではありません。神子がカオスの元へ向かいました」

「な、何だと…?何を言っているコスモス」

「彼女は自分一人で決着をつけると言っていました。…あなたをこれ以上巻き込まぬように」

「……ま、まさか」






コスモスの言葉が耳に届く度、私の思考回路はどんどん嫌な方向へ動いていった。
アエリアがカオスの元へ向かっただと…?私を巻き込まぬよう…?
まさか、嘘だ。今カオスの元へなど行けば確実に…




「何とかクリスタルもすべて揃ったので急いで戦士達を向かわせましたが…間に合うかどうか…」

「……ッ…!!」



コスモスが言葉を言い終えるより先に 私は彼女の横を通りすぎていた。早くアエリアを助けに行かねば。ただその一心で身体が動いた。衝動的、といえばそうなる行動だった。














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カオスの元に近づくにつれ 息苦しさを感じるようになる。改めて考えると混沌の神とは恐ろしい存在だ。
意を決して踏み入れた建物の中は深い闇に満ちており、小一時間もいたら気が狂いそうだった。








「…そうだ、アエリア…アエリアは…」


私は我に返ったように顔を上げ、重い空気を掻き分けるようにして奥へ進みアエリアを探した。

だが行けども行けどもその姿は見受けられず、ついにカオスの構える最奥まで辿り着いてしまう。








「…………!」



私がそこで見たものは、次々と消え行くコスモスの戦士達だった。残った者も一人、また一人と姿を消し、床にあるのはクリスタルの輝きだけ。
その隣に見覚えのある髪飾りを見つけ、私は言葉を失った。アエリアがいつもつけていた髪飾り…遅かった…間に合わなかったとでもいうのか…!










「混沌の神よ…何故、このような…何故アエリアを…!」

「……我に刃向かった罰よ。光の戦士達も、コスモスも、世界も…真の混沌に包まれるのみ」

「くっ……よくも…!」



私はアエリアの髪飾りを握りしめ カオスに近づき下から睨み上げた。しかしカオスと目が合った途端 身が凍りつくようなものを感じ、震えが走る。

これが真の恐怖だとでもいうのか…!

コスモスの戦士達の攻撃を受けてもなお立ちはだかるカオスに絶望の色が浮かんだ刹那、力なく伏せていた一人の勇者がゆっくりと顔を上げた。










「……光はまだ消えていない!光は……我らと共にある!」










勇者はそう声を張り上げ、落ちていた剣と盾を手に再びカオス目掛けて駆け出した。
すると床に散らばっていたクリスタルが彼の近くに吸い寄せられるように集まり一つの結晶になる。
その眩さからカオスに一瞬の隙が生まれ、勇者の光を纏った一撃がカオスを貫いた。




「――これで終わりだ、カオス!」


「ぐ…ッ!バカな……!!」




「――――ッ!」




カオスは唸るような声を上げ自らの混沌の闇へと落ちていった。力尽きたのか、同時にその場に倒れ込む光の戦士。すべてが終わった……そう思った。









「………な、なに…っ?!」





だがカオスが完全に消えた途端、激しい地鳴りと共に空が割れた。混沌に包まれていた世界に閃光が走り、状況が理解できぬまま私は意識を絶たれたのだった。








混沌を貫く光

(それでもアエリアは救えなかった

真の絶望というものを この時私は知った)









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