潔く、美しい赤
□第3話
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昼休み、昼食をとりおえた椛はベランダから外を眺めぼーっとしていた。
「いつにもましてぼーっとして‥何、眠いの?」
『‥ん〜‥?うん〜‥』
律子の問い掛けにやんわり反応するが、目はうつろ。
『いや〜‥昼寝日和だね‥』
「まだ少し肌寒くない?それよりもうすぐ5限目はじまるよー」
『ん〜…』
律子に引っ張られ渋々教室に入った椛。確かに、日なたは温かいがまだ空気は少し肌寒さが残っていた。実際椛は制服の上にジャージを羽織っている。
『…トイレ行ってくるね』
「そのままサボっちゃだめよ?」
『・・・・はーぃ』
返事に若干の間があったが、そのまま教室をでていく椛。
『(…お母さんみたい)』
廊下を歩きながら鋭い律子に内心苦笑していた。
なぜなら椛が向かうのはトイレ、…ではない。
『(…ここだよね?)』
覚えたての校舎内、階段を見つめ確認しつつ足を運んだのは屋上。
まさしく律子の言う通りサボるつもりだったのだ、さすが親友。
ガチャっとドアを開ければ青い空が広がる。
『…あれ』
どこがいいかなぁと見渡したところ、そこにはゴロリと横たわる男がいた。
『(…デカイ)』
そーっと近づいてみたが、普通に熟睡しているようだ。
椛は、先客が居た事に少し残念な気持ちになるが、眠る男の顔をみてどこかで見た顔だなぁと気づく。
『(………あれ、朝の…?)』
そこに眠っていたのは流川楓。
勿論椛は名前など知らないが、公園でバスケをした人だというのはわかった。
『(なんだ同じ湘北だったんだ)』
軽く驚きつつその顔を覗き込む。
瞼は閉じられているが、間違いなさそうだ。
屋上での昼寝は諦めるかなぁと思っていると、突然寝ていた流川がクシャミをした。
『!』
いきなりの事で驚いた椛だが、クシャミをした当の本人はいまだ夢の中らしく小さな寝息をたてている。
『(ビックリした…)』
しばしその様子を見ていた椛だったが、予鈴が聞こえてきたので立ち上がると、着ていたジャージを脱ぎ気持ちよさそうに眠る流川へとかけた。
『(風邪ひくとよくないからね)』
体格差のせいで、かけたジャージが小さく見えおもわずクッと笑った椛は、そのまま静かに屋上をあとにした。
「絶対サボるんだと思ったのに」
教室に戻れば案の定律子に驚かれて、苦笑する椛。
『ん、先客がいた』
「そう。…あれジャージは?」
『風邪予防に使った』
「は?」
心なしか楽しそうにみえるその姿に律子は不思議に思い、席についてからも尚椛の言葉に首を傾げていた。
一方屋上でも、しばらくして目が覚めた流川がジャージをみながら首を傾げていた。
今日も空は青い
「…藤真って誰だ」
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