潔く、美しい赤
□第2話
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朝からうるさく鳴り響いている目覚まし時計。
暫くしてからそれをとめた流川は頭をかきながらむくりと起き上がった。
「‥‥」
寝間着を脱ぎ捨て袖を通したのは制服、……ではなく運動用のスウェット。
部屋をでて簡単に用意を済ませると、ボールの入った鞄を掴み家をでていった。
「ふしゅーっ…」
自転車を走らせたどり着いたのはシンプルな公園。
遊具はあまりないが、そこにはバスケットのリングが設置されている。
「(…ちっ、先客か?)」
わきに自転車をとめ乱れた息をととのえていると、ボールのつく音が聞こえてきた。
小さく舌打ちをしつつ中を覗けばそこにいるのは1人の…
「(女…?)」
後ろで束ねた長い髪を揺らしテンポよくボールを放っている。
0度から、45度から、90度から…狂いもなく綺麗にスリーポイントをきめていく。
そのフォームはすごく綺麗で、打点は随分と高い。左利きらしく左手のワンハンドでうっていた。
「(ほぉ‥)」
スリーポイントだけではなくどこからうってもそれは変わらなく、おまけにドリブルさばきもかなりのもので…それだけでも結構な実力者だというのがわかる。
流川もおもわず感心した。
『ふぅ……?』
「ぁ」
視線を感じたのか、ふと流川の方をみた女。
その時はじめて二人の視線が合った。
『……』
「……」
『……あ、もしかして使いにきました?』
微妙な無言空間ができたあと、女は流川の手にバスケットボールがある事に気づいたようで、リングを指差して聞いてくる。
「…まぁ」
『いいですよ、使って。あたしはもうそろそろ帰りますんで』
女はおいでおいでと手招くと小さく微笑んだ。
軽く会釈した流川は公園内に入るが、内心驚いていた。
なぜなら目が合った女は、昨日学校で見かけた栗色の髪の女だったからだ。
髪をしばっていて格好が制服ではないので確信はもてないが、髪の色は同じ。
たしかこんな顔をしてた、はず。
『ぁ、どうぞー』
声もゆっくりとした喋り方も、駐輪場でなにやら言い合ってた時のものと同じだ。
「おい」
『ん?』
「勝負しろィ」
『…は?』
言われた方は勿論、言った流川本人も驚いていた。
見ず知らずの、しかも女相手に勝負を挑むなんてどーしたものか。
『…あたし?女ですけどいいんですか?』
「…多分」
お互いに、"多分て・・"という空気になったが、その空気に女が小さく噴き出す。
『あたしでいいなら、お願いします』
僅かに笑みを浮かべそう言うと自分のボールをベンチに置き、流川の横に戻ってきた。
どっちからディフェンス?との問い掛けに、大体を決めるとお互いが向かいあう。
「!」
なんで勝負してるのかとかそんな事よりも、向かい合った時の女の目に驚く流川。
先程までの柔らかい雰囲気は消えさり、獲物を狙うかのようなギラギラとしたモノに変わっているのだ。
流川は直感で、やはりコイツはできる‥と思った。
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