潔く、美しい赤
□第7話
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『あ、おはよー』
「…うす」
朝。
本来ならまだ椛が1人で朝練を行っている時間帯なのだが、流川も顔をだした。
特に理由はないが、なんとなく。
「……」
軽くストレッチをしながら動き回る椛を見遣る。
特に流川が早くきた事に関して疑問に思っていなそうだ。あまり気にする様子もなく黙々と1人練習をしている。
『…あ』
と思ったら、不意に何か思い出したように流川の方を向いた。
『ねえ、その傷つくった人って、桜木花道?』
昨日体育館で行われていた勝負。その時"赤い髪"という部分に多少何かひっかかっていた椛は、たった今、流川の顔をみてある事を思い出したのだ。
「そう」
『やっぱり…!』
何故か若干嬉しそうにした椛に近づくと、流川はその手からボールを奪う。
「それがなんだ」
『ん、昨日体育館で見つけたの、赤い髪』
「…ああ」
体育館と聞き、放課後の出来事を思いだした流川。実は流川もあの勝負を見ていた1人だ。
『もしかして、見てた?』
「まあ」
『どう思った?』
その問い掛けに、流川には何故だか椛の考えている事が理解できた。
「…別に」
めちゃくちゃな内容だったがどこか桜木に素質を感じたのは確かで…おそらく椛もそう感じているのだろうと思った。
が、しかし、相手はなんとなく気に食わない桜木。そんな相手をおおっぴらに流川が認めるはずもない。
その返答にふーんとつまらなそうに呟いている椛を1度見下ろすと、奪いとっていたボールをリングへと放った。
『あ、あたしマネージャーやる事になったから』
そのボールを目で追いながら、よろしくーとつげた椛だが、再び向けられた流川の視線に首を傾げた。
「なんでだ」
『…ぇ?何?』
「なんでマネージャー」
流川には、椛のような人物が何故選手じゃなくてマネージャーなんだという疑問がわいているのだ。
その疑問に答えるべく、湘北へきた理由を簡潔に述べた椛は地面に落ちているボールを拾いにいく。
「…もったいねぇ」
戻ってきた椛におもわずそうこぼした流川だが、椛はニヤリと笑いその顔を見上げた。
『マネージャーとしても有能ですよ』
「……自意識過剰」
『流川には負けると思うな』
「…うぜー」
『ひどっ』
ゲシッと流川のスネを蹴りボールをつきながらリングへ向かう椛。
流川はその後ろ姿をじとっと睨みつけていた。
「(地味に痛ぇ…)」
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