潔く、美しい赤
□第8話
1ページ/2ページ
『あ』
翌朝、椛は公園に着いて流川を見つけるなり若干険しい顔をして近づいていった。
『ちょっと、』
「った……んだよ」
持っていたボールを流川の背中目掛けて投げた椛。いきなりの衝撃に流川は何事かと、ギロリと椛の方をみた。
『なんで昨日起こしてくれなかったのー』
「昨日…?」
『屋上で』
「…ああ」
ボールを拾った椛は流川の横に立ち、どこか不満そうにする。
『起きてビックリしたよ』
「…どあほう」
『ぐっ…』
「起こしたけどおまえが起きなかっただけだ」
『…へ?』
不満げな椛の頭に片手をのばしボールのようにガシっとつかむと、大きなため息をついた。
『え…起こしたの?』
「顔叩いて…つねった」
『…それは……お手数おかけしまして…いたたたたっ!?』
苦笑いを浮かべた椛、その頭を掴む手に力をいれた流川はまたもや大袈裟にため息をつく。
『そ、それなら…起きるまで起こしてほしかった、な〜』
「めんどくせー」
『むぅ…』
椛は、手を離した流川に、寝ちゃったあたしが悪いけどさ、と小さく呟いて持っていたボールをリングへと放った。
『そーいえば最近流川って来るの早いね』
「…そうか?」
『そうだよ。だって前は私が帰るぐらいに来てたじゃん?』
「…たしかに」
『え、無意識?』
なんだそれ、と笑う椛を見ながら流川は考える。
当たり前のようにこの時間に来ているが、それはまァなんとなくでセットした時間を戻してないから早くきてるだけなのだが。
「……」
『……』
「……」
『何?』
じーっと見下ろしてくる流川に椛は首を傾げる。
「…別に」
特に意味はないのか再び練習をしだした為、椛もそれ以上の追求はしなかった。
『誰かいた方が楽しいから、私は構わないけどね』
そう笑った椛をみて、じゃあ時間は戻さなくていいかと頭の片隅で流川は思ったとか思わなかったとか。
「…背中」
『ん?』
視線をそらしボソリと呟く。
「さっきの、痛かった」
『……ゴメンナサイ』
「ジュース奢ったら許してやる」
『えーなにそれ』
小さな照れ隠しに、椛も流川自身も気づいてなかった。
.