潔く、美しい赤
□第10話
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『あー、ずるい』
「む…ずるくねェ」
朝。
いつもの如く椛と流川は公園にいた。
『ダンクされちゃ流石に防ぎようがないよー』
初めてバスケをしたぶりに1on1をしたのだが、流川の容赦ないダンクに若干拗ねている椛。
流石に身長差が二十何センチもあってはダンクは無敵すぎる。
「…俺の勝ち」
『むー…』
「……」
地面に座りながらも悔しそうに流川を見つめた。
そんな視線を気にする事もなくリングにボールを放ちだした流川だったが、ふと椛に視線を戻したところで座っている彼女のひざが赤くなっている事に気づく。
「…血?」
『ん?』
「ひざ」
指をさされ、自分のひざに視線を向けた椛はあーと呟く。
『…さっき擦りむいたんだね』
さっき、とは。
1on1の最中、流川をとめようとしていた椛だったがぬかれる瞬間に1度転んでいるのだ。
「スゲー血でてねーか」
『ん?大丈夫。やっぱ少し足腰弱ってるんだなー』
椛に近寄ってきた流川だったが、すぐにタオルでおさえられてしまった為傷口を近くでみる事はできず。
擦りむいただけと言い張る椛に、眉を寄せた。
『…あ、』
「……」
ひざをおさえてたタオルを奪いとった流川はじぃっと椛を見る。
どこが擦りむいただけ、なんだと言わんばかりに。
擦りむいたどころではなく、あきらかに痛々しい傷口。
たぶん転んだ後、痛みはあっただろうに。気にせずに駆け回っていたその集中力には感心する。
『まあ…半分は固まってきてるからさ』
たいした事ないよ、と言った椛にどあほうと呟いた流川は、立ち上がるとそのままスタスタとどこかに歩いていく。
しばらくすれば戻ってきて、先程椛から奪いとっていたタオルを目の前に差し出した。
『…あれ、濡らしてきてくれたの?』
「拭いとけ」
タオルを受け取った椛は傷口やひざまわりの汚れをふきとりながら、ありがとーとにへっと笑う。
「……」
『…ん?』
「…ジュース1本」
『え、有料の優しさ!?』
「甘いの不可」
『なんだそれ』
詐欺だーと文句を言う椛を横目に、流川は再びリングへと向かった。
「(なんかあの顔調子狂う)」
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