潔く、美しい赤
□第12話
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桜木の退部騒動があったバスケ部は、今日も変わらず練習に励んでいる。
「ちょっとは手加減しなさいよ!!かよわい少女が相手なんだから」
『彩ちゃんあたし代わろうか?』
体育館の隅、彩子に怒られているのは桜木花道。
実はあの日、しばらくして桜木は自ら体育館へと戻ってきた。
それによってどーにか丸くおさまり今では次のステップであるパスの基礎をやらせてもらっているのだ。
『次はバウンドパスねー』
「はい!!」
彩子に代わり桜木と向かいあっている椛を、流川は横目で見ながらも小さくため息をつく。
最近、そんな行動を無意識のうちに何回もしているのだが、当の本人は気づいてはいなかった。
「流川クーン!!ガンバッテ!!」
練習が続くなか、いきなりの黄色い声援に部員達が反応する。
声のした方を流川が見れば、そこにいた女生徒三人組がキャアキャアと騒ぎだした。
「ヒューヒューもてるじゃん流川無愛想なくせに」
「んだよ」
ニヤニヤと楽しそうにしている彩子にからかわれ、眉を寄せる。
『振り向いただけですごい喜んでる…』
ほーっと関心するかのように呟いた椛にマジマジと見上げられ、流川は何か言いたげにギロリと椛を睨んだ。
『手ェ振ってみたらどーなるんだろう』
「…絶対しねー」
横で呟いた椛の言葉にため息をつきながら流川も返せば、したらなんか気持ち悪いけど、と椛はクスリと笑った。
「……」
『流川が手ェ振るとか…想像つかないな。自分でもそう思う?』
「知らねー」
その姿を横目で黙って見おろしていた流川だったが、椛と視線がぶつかるや否やゆっくりだがフイッと視線をそらす。
再び椛が別の所に視線を向けると、ちらりと椛を見てから小さくため息をついた。
「(…おや?)」
その様子をたまたま見ていた彩子は、何やら面白いモノを見つけたかのように1人小さく怪しげに笑う。
『ん?どーしたの?』
「ううん、ちょっとね〜」
もしかして…と何かを思いついたが、とりあえずその続きの言葉は飲み込んでおいた。
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