潔く、美しい赤
□第11話
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屋上にて、流川は目の前の光景に僅かに眉を寄せた。
今は三限目の授業が終わったばかりだというのに、そこには横になりスヤスヤと眠っている生徒がいる。
ご丁寧に鞄を枕代わりにして。
近づいていき顔を覗きこめば、それは予想通りの見なれた人物…
今日の朝も共にバスケをしていた椛だった。
横にしゃがみこむと、スヤスヤと眠るその寝顔を見つめる。
手を伸ばし頬を軽くつねるが反応はない。
ずいぶんと気持ち良さそうに寝ているその姿に、流川は小さなため息をもらした。
「(…バカか?)」
よくよく考えれば以前にも自分の横で寝ていた事があったが、ちょっと無防備すぎではないか。
椛は一応女であって、こんな所で制服で1人寝るなんて危険すぎるのだ。
そんな事を思いながら、起こす気があるのかないのか…ムニムニと頬をつねっていた流川だったが、ふと何気なく椛の唇に目がいった。
疑問が浮かぶ。
「……」
つねっても反応しないのなら、例えば誰かにキスされても絶対に起きないのではないか?
現に今、指で触ってみているが反応は返ってこない。
「…」
寝顔を見ながらなんとなく指で椛の唇をなぞっていた流川だったが、はたと動きを止めその手を引っ込めた。
「(何してんだ)」
自分の行動に1人ツッコミをいれると、ガシガシと頭をかき明後日の方向を向く。
立ち上がり再び椛を見下ろすと、自分の学ランのボタンに手をかけた。
「(どあほう女)」
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