潔く、美しい赤
□第14話
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『…っくぁ』
「何でっかいアクビしてんの」
『いたっ…あー、りっちゃん』
授業終了後、教科書をしまっていた椛は、アクビによって涙目になったまま頭をさすりながら斜め上を見上げた。
「トイレ、いかない?」
『ん』
律子に誘われ席を立つ。
『なーんか、雨の日って眠くなるよね』
「アンタはいつも眠いでしょ」
廊下を進みながら窓の外に視線をやった椛に律子は苦笑した。
余計にだよ、と付け足した椛も同じように苦笑する。
「あ、ねえさっきの時間隣のクラスで流川くん暴れたらしいよ」
『…暴れた?』
意味がよくわからず僅かに椛は首を傾げた。
そーいえば、なにやら10組が騒がしかったような…。
「居眠りしてた流川くんを先生が無理矢理起こしたらしくてさ。で、寝惚けた流川くんがしばらく大暴れして大変だったみたい」
そんなに寝起きが悪いのか…と、いつだったか屋上で眠っていた流川の姿を思いだし、あの時起こさなくてよかったなァと1人思う。
「…おや、噂をすれば」
『ん?』
律子にヒジでつつかれ前方を見れば、噂の流川が歩いてくるところだった。
流川くん、と律子が呼んでみれば今椛達の存在に気づいたようで、小さな会釈が返ってくる。
『暴れたんだって?』
自然と立ち止まったので椛が律子から聞いた話をふれば、うるせーと不機嫌そうに一言呟く。
先生は労ってあげなよ、と笑い通り過ぎれば椛の襟首目掛けて流川は手を伸ばした。
『ぐぇっ…』
おもわず蛙がつぶれたような声がもれる。
『な、なに?』
「…今日も、部活の後待ってろ」
乱暴に自分を引き止めた流川を見上げれば思いもしない言葉がふってきて目をぱちくりさせた椛。
一瞬、何の事を言ってるのかわからなかったのだ。
何も答えないうちに流川はスタスタと行ってしまう。
「…ちょっと椛、どーゆう事!?」
『ぐぇっ…』
一連の流れを黙って見ていた律子によって、椛は本日二度目となる声をもらした。
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