潔く、美しい赤
□第15話
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「どうかした?」
『…へ?』
昼、弁当をつついていた椛は律子の問いかけに箸をとめた。
『何が??』
「なんか…今日いつもと違う」
『違う??』
言われた事に自覚はなく首を傾げる。
「ボーッとしてるのはいつもなんだけど…ちょっと違うのよね」
箸をくわえたままの律子は、椛を見たままうーんと眉間にシワを寄せた。
つられて僅かに眉を寄せる椛。
数秒間無言で見つめ合っていれば、何かを思い出したように律子が声をあげた。
「ねえ、そーいえば流川くんとは何かあった?」
『流川?』
流川の名を聞き頭に過ったのは朝言われた言葉。
『あった…といえばあった、かな?』
「何、何!?」
ガッツリ食いついてくる律子におもわず苦笑がもれる。
別にたいした事じゃないんだけど…と前置きすれば、何かあるだけでたいした事だと言い返された。
『朝、言われた』
「何を?」
『これからは帰り送ってく、って』
椛の言葉に律子は目を見開く。もしかしなくても、流川は椛に気があるのではないかと。
『なんか…変に意地になってんのかなあ』
「は?」
『昨日さ、無理して送ってくれなくていいって言ったんだけど…』
部活前に流川に言われた言葉をそのまま律子に伝え、椛は再び朝の事を思い返していた。
─ねー流川、帰りの事なんだけど本当大丈夫だよ?
─何が
─わざわざ遠回りさせてまで疲れた部員に送らせるってのはやっぱり、
─うるせー…
─う、うるせーって…
─黙って送られてりゃいい
─なんだそりゃ
─これからは…送っていく
─…え……今日も?
─おー
─…明日も?
─おー
─…………。
それ以上その話はしていない。
明日までしか聞いていないがこれからは、という事は明後日もその先もという事なんだろうなァと椛は卵焼きを口に放り込みながら考える。
「(だからなんか様子が違ってみえたのか…)」
今日1日、無意識に流川の事を考えていたであろう椛をみながら、律子はニヤリと薄い笑みを浮かべた。
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