潔く、美しい赤
□第16話
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息をきらし、公園のわきに自転車をとめた流川は首を傾げた。
「(何してんだ、アイツ)」
視線の先にはフェンスに張り付き公園の中を覗いている椛の姿。
いつもなら先に来ていて1人でバスケをしているはずなのだが…。
「何してんだ」
『あ、流川おはよ』
声をかければチラリとこちらを見て直ぐに中へと視線を戻してしまう。椛の背後から同じように流川も公園内へと視線を向ければ、そこには見覚えのある人物がいた。
「(あれは…)」
赤い髪、桜木花道だ。それに赤木の妹の晴子もいる。
『なんかね、ドリブルシュートの練習してるの』
少し声のトーンを抑えた椛が中の様子を話す。
たしかに、見ていれば桜木がシュートの練習をしていた。
「(手が悪い)」
『惜しいんだけどなー…手がなー』
どこか楽しげな椛。
前から思っていたが彼女はバスケを見ている時、実に楽しそうだ。
練習中も、真剣な表情で部員達を見ているのだがそれでもどこか楽しげで。
時折、嬉しそうに笑う事がある。
流川がその顔を思い出しながら中の様子を見ていれば、今まで力みすぎていた桜木のドリブルシュートに変化があった。
「お」
『お…』
おもわず流川も声がもれる。
同じように声をもらした椛をチラリと見下ろせば、たった今思い出していた嬉しそうな顔がそこにはあった。
『いい感じ、いい感じ』
「……」
向けられているのが自分ではない事に不満を感じる。
しかし、次にうった桜木のドリブルシュートが決まった時の至極嬉しそうな椛の顔に、流川はおもわず見惚れてしまった。
『見て、桜木嬉しそう』
「(…おめーも嬉しそうじゃねーか)」
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