潔く、美しい赤
□第19話
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『(…ちょっと新鮮)』
部員達がユニフォームに着替えベンチに出てきたところで、戻ってきた椛は薄く笑みを浮かべる。
「おお〜花道ちゃんとユニフォームもらってんじゃねーか!!」
「しかも10番!!」
「ハッハッハッ実力だ実力!!」
ユニフォーム姿の桜木に、上のギャラリーで驚きの声をあげている桜木軍団。
『なかなかカッコイイじゃん』
得意気に笑う桜木と横にいた流川に言えば、流川はどこか不機嫌そうに黙りこんだ。
『…なんかあったの?』
「あ、藤真。それがさ〜…」
フイッと離れていく流川がなんとなく気になり、近くにいた1年の佐々岡に声をかけた椛は15分程前の出来事を知る。
自分がスタメンじゃない事に不満を撒き散らした桜木。
秘密兵器だからスタメンじゃないと言った安西の言葉でどーにか落ち着きかけたものの、じゃあユニフォームをくれと今度は流川から横取りしようとして喧嘩になったとか。
騒ぎをおさえる為に、桜木は10番で流川は11番であとは1つずつずれてくれと木暮が提案してようやく落ち着いたらしい。
『(15までしかないもんね…)』
テープでTシャツに16と貼られた事を嘆く佐々岡に、椛はドンマイと肩を叩くとそっとそばを離れた。
「遅かったな」
『ん?ああ途中であそこの軍団に会ってさ』
再び流川に近づけば今度は普通に声をかけられた椛。
ギャラリーを指差しながら、声の主流川を見上げる。
先程佐々岡から話を聞いた事を伝えれば、うるせーと流川は不機嫌そうに呟いた。
「俺は悪くねー」
『まあ、桜木が……って何してんのーアイツ』
椛の視界に、何故か陵南の部員達に混ざっている桜木が入る。
その視線を追って何をしてんだと流川も見ていれば、チワースと誰かの声が体育館に響き渡った。
入口に立つのは遅刻してきた陵南のエース仙道。
怒鳴る顧問田岡に、寝坊ですと告げている顔は笑顔だ。
思わず少し笑ってしまった椛は、部員達が集まり迎えてる姿を見て、慕われてるんだなァと何気なく思った。
「……」
『…』
自分の横、真剣な眼差しで仙道を見ている流川。
その横顔を、黙って見つめる。
『……流川』
「……」
『……』
「…なんだ」
何気なく呼び掛けてみたが、言葉が続かない。
なんで呼んだんだっけ…?
一瞬考えた椛だったがすぐにああそうだと思いつくと、僅かに首を傾げている流川に向けて拳をつきだした。
『勝つんでしょ?』
「…たりめーだ」
流川はその拳にコツンと自分の拳をぶつけ返すと、赤木の声でコートへと足を踏み入れる。
その背中を見送った椛からは、おもわず笑みがもれていた。
『(…頑張れ)』
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