潔く、美しい赤
□第21話
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『……』
椛は今、床にひかれたカーペットの上に座りボーッとしていた。
すぐ横にある大きめのベッドの上には爆睡している1人の男。
その男とは、流川楓だ。
ちなみに椛がいるのは流川家の流川の部屋。
一体何故こんな所にいるのかと言うと、それは約2時間程前に遡る。
練習試合後、湘北高校にて解散となった椛達。
まだ昼で明るいのだが、いつもの様に流川に送ると言われたので椛もいつも通り後ろに乗った。
─着いた
─…ここどこ?
─オレんち
─…は?
そして何故か自分の家ではなく、連れてこられたのは流川の家。
どうりで見慣れない景色が続くと思った…と自転車から降りた椛は遅れて気づく。
とりあえずお邪魔すれば1人部屋で待たされ、少しして戻ってきたのはシャワーを浴びたらしい流川だった。
そこでようやく連れてこられた理由を問いかけた椛。
流川本人が言うには、ちゃんと送るが疲れたから少し休みたいとの事。
─疲れてんなら自分で、
─いいから待ってろ
─…待ってろって…
─………
─……寝るの早い
ベッドに寝転ぶとすぐさま夢の世界へと旅立ってしまった流川に小さくため息をついた。
そして…今に至る。
『(起きるのを…待ってろって事だよね)』
このまま寝かせておいて自分は帰るという選択肢もなくはないのだが、残念ながら現在地がどこなのかが椛にはよくわからない。
なので、帰るには流川を待つしかないのだ。
『(…どれぐらいで起きるんだろ)』
いつだったか、寝起きがあまりよくないらしいと律子から聞いた気がするので、起こすのもなんとなく躊躇ってしまう。
流川が眠り始めて約2時間が経過しているが、未だ起きる気配はない。
その辺にあるバスケ雑誌などを見ていたが、さすがの椛も他人の家に2時間も放置されればヒマを感じてきた。
『(そーいえば…なんか少し不機嫌だったな)』
帰り道を思い出し、ベッドに眠る流川に視線をむけると気持ち良さそうに眠るその顔を覗きこむ。
『(試合に負けたから?…お、結構まつ毛長い…)』
こんなに間近で寝顔を見るのは弟のぐらいだろうか。
珍しいモノを見るように、流川の顔をおもわずジーッと観察してしまう。
『(つまんない無反応…)』
なにげなく頬をつついてみたりしたのだが、反応は全く返ってこなかった。
陽当たりのいい部屋に、椛はアクビをひとつこぼす。
『(あ…音楽聴くんだ)』
なんか意外、と思いながらベッドにのりだすと流川の枕元にあったCDにそーっと手を伸ばし物色。
辺りを見回しあるものを発見すると、なにやら少し楽しそうに椛は笑った。
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