潔く、美しい赤
□第5話
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屋上からの階段をふらふらしながら降りている流川。
「(こりゃあマジに病院かな…桜木か…あんにゃろう)」
その額からはどくどくと血が流れている。
あの後すぐに1人の女が桜木をとめにきた。なんだかよくわからないが見損なったがどーのと桜木に言い放ち、血がついていた流川にハンカチを差し出してきたのだ。
別にたいした怪我でもなかったしさっさと帰りたかったので、制服の袖で拭き断った流川だったが、それをとめるように、病院に行った方がいいと騒がれた。
─うるせーなほっとけよ、だれだおまえ
女に向けたその言葉の直後、桜木に殴られ何度も頭突きをされた。
なんだかよくわからないうえ、さすがにムカついた流川が桜木を殴り返すと、一触即発。
さすがにヤバイと思ったのか、桜木と共にいた他の4人が間にはいってとめたのだ。
そして、今にいたる。
「(血がとまらん…)」
階段を降り終え曲がろうとしたところでふらついた流川。
壁に寄り掛かったつもりだったが、誰かのギャッという短い叫び声と共に廊下に倒れ込んだ。
「(…やべ)」
倒れた自分と廊下の間をみれば人が…壁だと思ったがどーやら人だったらしく巻き込んで潰してしまったらしい、しかも見知った顔。
『…ぅ〜…?流川…?』
「…わりぃ」
唸られ上から体をどかすと、椛もむくりと体を起こした。
『びっくりした…って………何、そのケガ。すごい血』
流川を見ながら険しい顔をする椛。
「‥からまれた」
『誰に?』
「桜木とかいう赤頭」
『桜木…??わかんないや。なんで?』
「知らねー」
こっちが聞きたい、と思いながら立ち上がる流川は微妙にふらついている。
その様子を見ていた椛は、立ち上がり流川の横に並んだ。
「…なんだ」
『肩、貸すよ。保健室行くんでしょ?フラフラしてる』
流川の脇に入り腕を自分の肩にまわさせるとその体を支える。
先程屋上では、再度女からハンカチを差し出された時も半分意地で断った流川なのだが、今回は素直にその言葉に甘える事にした。
椛の言う通りさすがにフラフラするのだ。
「‥どーも」
『いーえ』
とはいえ自分よりもはるかに細くて小さい椛に、寄り掛かるのには若干気が引けた。
そんな事を考えていれば、見透かされたような言葉をかけられる。
『少しは寄り掛かって平気だよ、あたし結構力持ちだから』
「……」
『いや……誰も全体重かけていいなんて言ってない』
今言った力持ちというのはあながち間違いではないらしい。本当に全体重に近いぐらい寄り掛かってみた流川だが、椛はぐっとこらえていたのだ。
勿論それはわざとだったので、今度は程よく寄り掛からせてもらうと保健室へと足を運んだ。
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