潔く、美しい赤
□第6話
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放課後、下駄箱までやってきた椛と律子はなにやら騒がしい体育館まわりに気づき顔を見合わせ首を傾げた。
『なんだろー』
「さぁ……あ、ねぇ体育館でなんかあるの?」
横を過ぎていく生徒に話しかければ、バスケ部主将と1年の桜木がバスケ勝負をするんだとか。
『桜木…って誰?』
「ああ、7組の不良よ」
『不良?』
「赤い髪のリーゼント。見たことない?」
『…赤い髪…??ないと思う』
「結構有名よ?」
『へぇ』
そんな頭の人ならば、いくら椛でも忘れたりはしないだろう。
ただ、"赤"と言われ最近なんかの会話にでてきた気がする…とも思ったがよくわからなかった。
体育館を覗けばすごいギャラリーが。中にはゴツイ顔の男と赤い髪の男がいた。
『わぁ…本当に赤だ』
おもわず目をひくその男に若干の興味を示した椛は、中で行われている勝負とやらを黙ってみはじめる。
途中、転んだ桜木が主将"赤木"のズボンを掴み尻を丸出しにしてしまうアクシデントがあり…
桜木は本当に素人らしく、はたしてこれを勝負と呼んでいいものかどうか疑問のわく戦いが繰り広げられていたが、椛の表情はどこか楽しげだった。
「……可能性を感じちゃった?」
『ん』
長年付き添ってきた律子にはその表情の意味がよくわかる。肯定の意の短い返事を返した椛は、動き回る桜木を目で追っていた。
「そろそろバイト間に合わなくなるから帰るね」
『あ、うん』
ジッと中を眺めている椛を横目に、律子はまた明日ねーっ頭を軽く叩きその場をあとにする。
「(バスケ馬鹿はいつになってもバスケ馬鹿ね〜)」
そんなところも可愛く思えてしまっている親友の姿を思い浮かべては、律子は小さく笑っていた。
「…あら、椛!」
『あー、彩ちゃん〜』
赤木と桜木の勝負も終わり、体育館をあとにする人の波に押し潰されていた椛は、声のした方へと顔を向けた。
そこにいたのは湘北高校バスケ部のマネージャー、彩子。
椛を誘った張本人だ。
「何してんのよ」
『いや、人の波って恐いわ』
「…何の話よ」
『ちょっとね』
「で?今日はどうしたの?」
その問い掛けに本来の用事を思い出した椛は、姿勢を正すと彩子の目を見据えてニッコリと笑った。
赤頭とゴリラ
「赤木センパーイ!椛がついに決断しましたよー!!」
「ほー、それが頼りになるマネージャーか」
『…どーも(デカッ…)』
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