潔く、美しい赤
□第7話
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昼。
廊下を歩いていた椛は、ふと先に赤い頭をみつけた。
『(あ…桜木花道)』
赤い髪なうえ周りより身長が飛び抜けている彼は、捜そうと思えばみつけやすかった。
入学してからいかに周りを見ていなかったのかと椛が改めて実感していると、1人の女子と目が合う。
『(…可愛い)』
なんとなくニコリと微笑むと、あちらも笑い返してくれた。
「…ん?晴子ちゃん知り合い?」
「え?ううん違うけど…」
女子の視線が近くにいた黒髪リーゼントの男子へとそれると、椛もそこから視線をはずし、ある場所へと足をすすめた。
「む」
『…おや』
途中、最近なにかと遭遇する顔に出会いその足をとめる。
バスケをしている時とは違く、のそりとしているその男…流川とは朝ぶりだ。
『……』
「……」
どうやら目的は一緒だったようでお互いチラリと視線を階段へと向けた。
「…サボりか」
『違いますー』
椛の返答に、じゃあなんだと内心疑問を抱きつつ流川は階段をあがっていく。
数段先をいく椛はくるりと体の向きを変えると流川を見下ろした。
『…あたし呼び出されたんだけどさぁ、着いてきちゃうの?』
「オレは寝にきた」
だからなんなんだと言わんばかりの流川の態度に、まぁ屋上は皆のものかと何故か納得した椛は、再び階段をあがりはじめた。
ガチャリとノブをまわし開けられた扉の先には、1人の男子生徒。
「…あ、藤真さ…!」
振り返り椛の姿を確認すると駆け寄ってきたが、その真後ろにいた人物を視界にとらえるなり動きをとめた。
『?』
「そ、…そーいう事なんだ…!」
どーいう事だ?と首を傾げる椛だったが、男の視線に気づきふと背後に立つ流川を見上げる。
「付き合ってるんだね……!」
どーやら何かを誤解しているらしく、流川と椛を交互に見ては驚きと悲しみの混じった表情を浮かべた。
やがて、何かを叫んでドアの所にいる2人の横をすり抜け階段を降りて行ってしまった。
『……』
「……おい」
なんだ今のは?と視線を椛へと投げかけた流川だが、当の本人はよくわからないといった風に首を傾げた。
『……え?』
「え?じゃねー」
小さくため息をついた流川は椛を押しのけ屋上へと出る。
『…え、あの人もしかしてなんか勘違いした?』
「おそらく」
『へえー』
ゴロリと寝転ぶ流川に近づき尋ねた椛だったが、まるで他人事かのような声をもらし特に気にする様子もみせず、手摺りの方へと歩いていった。
「…くぁ」
流川もまた、気にする事なくそのまま夢の中へと旅立とうとしていた。
『(…寝る場所とられたなぁ)』
「(…あいつ結局サボるんじゃねーか)」
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