潔く、美しい赤
□第9話
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『じゃありっちゃん、気をつけてね』
「あんたこそ頑張ってね」
『はーい』
放課後、律子と別れ部活に向かう前に椛は2年の階へと足を運んだ。
『…彩ちゃん…何組だっけ』
ふと廊下で立ち止まり1人呟く。
彩子と一緒に向かう約束をしていたのだが、クラスを聞いてなかった事を思い出したのだ。
『(教室一個ずつ覗いていくか)』
しばらく考えていたがとりあえずそう結論づける。しかし、足を動かしたと同時ぐらいに椛は誰かに名前を呼ばれた。
「椛、こっちよ」
『…彩ちゃん!よかった〜見つかって』
ふり返り確認すれば教室から彩子が顔をだしている。
「やっぱり椛だったのね」
『やっぱりって?』
「ううんなんでもないわ、さァ行くわよー」
彩子は、廊下に1年らしき可愛い子がいたと話す男子達の会話を聞きまさかと思い廊下にでてきたのだ。
不思議そうに首を傾げる椛をよそに予感が当たったわ、と小さく頷いていた。
『これで全部?』
「そうね。…あ、やば、急いで行かなきゃ」
椛に教えながら準備をしていた彩子が時計をみて慌てる。
思いのほか時間をくってしまったらしい。
椛も中学時代にはいていたバッシュに足をいれるとフッと小さく笑ってから急いでヒモを結び荷物を肩にかけた。
『先輩すいません遅れました!』
「どーもスイマセンおくれちゃって!!」
「おせーぞ彩子、藤真」
体育館のドアを開ければキャプテンの赤木の声と共に皆の視線が二人に集る。
1年らしき生徒達が並んでいるところを見れば、自己紹介かなにかをしていたのだろうと察しがついた。
「アタシマネージャーの彩子!
2年ですヨロシクー!!」
元気よく挨拶した彩子にたいしどこか照れてモジモジとだんまりの1年達。
そんな彼らに彩子は近づいていき声を出すよう一人一人に気合いをいれていった。
やがてそんな光景を傍観していた椛は赤木に呼ばれる。
「藤真」
『はい?…ぁ…同じくマネージャーで1年の藤真です!よろしく』
その声にハタと気付き、彩子同様一人一人に近づいていき握手を求めた。
『改めてよろしくー』
「…」
差し出された手を一応握りながらもどこかいつもよりテンション高めな椛に違和感を感じた流川はジッとその顔を見下ろす。
『…ん?』
「…頭でも打ったか」
『は?何それ?…あ、えっと…、桜木!』
変な質問に首を傾げた椛だったが、隣にいる赤い髪の男に気付き意識をそちらに向けてしまった。
地味にスルーされた流川。
「何?アンタ椛と知り合いだったの?」
その様子を見ていた彩子が不思議そうに声をかければ流川は頷きながらも「最近」と付け足す。
「へえ〜そりゃ知らなかったわ!…ちなみにあの子、体育館内のバスケが久しぶりだからテンションあがってんのよ」
「…変な女」
『期待してるよ桜木花道』
「…は、はい!この天才に不可能はないですから!!」
『うんうん』
桜木と楽しげに笑う後輩と、それを横目で見ながらいつも通り無表情の後輩を交互にみて、なにやら彩子は1人微笑を浮かべた。
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