潔く、美しい赤
□第10話
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休み時間。
眠りから覚めたばかりの流川は、クラスの男子達からよくわからない質問をされた。
"藤真さんと付き合ってるの?"
ふと、椛のにへっと笑ったなんともいえない顔が頭に過る。
おそらく、自分の知っているあの藤真椛の事を言っているんだろうがいったい何を根拠にそんな事を聞いてくるのかが理解できなかった。
「…や、あのさ、なんかそんな事を言ってたヤツがいてさ」
「そ、そうそう。それにホラ、藤真さんてバスケ部のマネージャーなんだろ?だからもしかしてって思って…」
「話してる姿も見た事あるし」
誰がそんな事を言ったんだかしらないが、群がってきた男子達は無表情(プラス眉間のシワ)の流川に怯え気味ながらも、まるで女子のように質問を投げ掛けてくる。
実に面倒である。
「違う」
何もないと言い切るように一言で切り捨てた流川は、席を立つとそのまま教室をでていく。
「ほら、やっぱ違うんだよ」
後ろからは安心したような男子達の声が聞こえた。
トイレにでも行こうかと廊下をすすんでいれば、何やら聞き慣れた声が耳に届く。
「(…藤真?)」
あまり使われていない資料室の中から、ついさっき話題に出された人物らしき声がした。
『…ごめんなさい』
「彼氏とか、好きな人いるの?」
『いないですけど…』
「ならよくない?」
雰囲気的に…何やら告白をされているような感じだ。
この短期間で告白現場に2度も遭遇(1度目は相手が勘違いして逃げた)なんて、タイミングがいーんだか悪いんだか。
またか、と思いながらも流川はおもわず足をとめた。
『あの、あたし教室戻らないと…次移動しなきゃいけないんで』
「いいじゃんサボっちゃいなよ」
『…サボる理由ありませんし』
所々聞こえないが、なにやら面倒な感じになっているのでは?と思った矢先、中からガタンと大きな音がする。
「!おい、……」
びっくりしておもわず中を覗いた流川だったが、目の前の光景に声をかけるのをやめた。
そこには
白眼をむいて床に転がる男。
『…あれ、流川。朝ぶり』
いつも通りな椛を見ながら、一体何があったんだ?と思っていれば、1人の女子が焦った様子で廊下をかけてきて資料室に入ってきた。
「椛っ!!…あー遅かった」
床に転がる男を、間に合わなかったかーと言いながら見ているのは以前流川も少しだけ話した事のある椛のクラスの女子…律子だ。
『あーりっちゃんも来た』
入ってきた律子に声をかけた椛だったが、ちょっとトイレ行きたかったの、とのんきにつげるとそのままパタパタと出て行ってしまう。
転がってる男に何があったのか気になる流川。
そのまま黙って見ていれば、椛の友人律子がその理由を教えてくれた。
「これ、あの子がやったの。椛に無理矢理迫ると返り討ちにされるのよ。ちなみに今までも何人か被害者いたのよねー」
どうやらこれは椛の仕業らしい。
律子は一応こーなる前にとめようと走ってきたのだが、まあ自業自得だよねと笑うと椛のあとを追って出ていった。
「(投げたのか?殴ったのか?)」
とりあえず、床に転がっている男に向けて手を合わせた流川。
椛がこんな女だと知ったらどんな反応をするのだろうかと先程質問してきた男子達を思い浮かべた。
微々たる変化
「(…ひくだろーな)」
可憐な感じがいい!と語っている姿が頭に過ったと同時に、何故か安心している自分がいる。
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