潔く、美しい赤

第14話
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「何それ!!早く言ってよ」


トイレにて、鏡ごしの椛を律子は驚いた表情で見た。



『え?重要?』
「当たり前でしょ!朝一緒にバスケしてるだけじゃなくて…まさか帰り道送ってもらってただなんて!」
『でも…送ってもらったの2回だけだよ』
「さっき3回目が確定したでしょーが」
『わっ…あ、そっか』



鼻息の荒い律子にピッと水を飛ばされた椛は手でそれを拭いながら納得したように頷く。



『そんな騒ぐような事?』
「送ってもらってるだけで事件よ」
『多分…彩ちゃんらへんが何か言ったんだと思うよ』



じゃなきゃいきなり送ってくれるのはおかしい、と椛は考えていた。
それに、以前にも彩子に帰路について何度か心配された事があったのだ。




「だからって…あの流川くんが先輩に言われたってだけで動くようには思えないけど」
『そう?んー…でもあれで結構優しいとこあったりするよ?』



でもやっぱり逆方向なのに送ってもらうのって悪いよね

そう呟いてる椛を見ながら、律子はいまいち納得のいかない表情を浮かべていた。






「ねえ、椛はどうなの?」
『何が?』
「流川くんの事、どう思ってるの?」
『どうって…、無愛想…負けず嫌い…意地っ張り…』




律子の質問にうーんと考える椛。やがて、ぽつりぽつりと思い浮かぶ言葉をあげていく。



「そーじゃなくて!!好きか嫌いかって事」
『好きか、嫌いか…?』
「そう」

『どっちって聞かれれば…好き?』
「じゃあ、もし流川くんに告白されたら?」
『へぁ?』



おかしな方向へと向かう律子の質問に、椛はおもわず間抜けな声がでた。
自分よりも若干背の高い律子を見つめ、少しばかり驚いた表情を浮かべる。





『好き嫌いって、そーゆう意味じゃないし。そんなの…考えた事もないからわかんないよ』


やがて、首を傾げそう答えた椛に今度は律子が驚いた表情を浮かべた。


「(…初めて、かも)」

実は、男女間の質問で椛からこんな曖昧な答えを言われたのが初めてなのだ。


今までなら、あの人に告白されたらどーする?と聞いても、椛からの答えは『断る』の一言だけ。
おそらく、意識して言ってるわけではないその答えだからこそ、今の曖昧な答えには余計に驚いたのだ。




「わかんない、のかァ…」

『うん?…え、何?』

「ううん、なんでもない」




律子からおもわず、ふーんと小さな笑みがもれた。

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