潔く、美しい赤
□第18話
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「はい1分ーー!!」
「ぷはーー!!」
他の乗客に微妙な視線を送られながら、電車の座席の上で空気イスを行う部員達。
羞恥心からと、公共の場でもある為静かにしている事を木暮はすすめたが、相手は陵南なのだからこのくらいの気合いが必要なんだと赤木が聞く耳を持たなかった。
『(陵南かァ…)』
つり革に掴まり目の前の何やら言い合いをしている桜木や流川ではなく、その後ろの窓の外を眺める椛は心なしか顔が少し微笑んでいる。
そんな様子に気づいた流川は、コツンと小さく椛の靴を蹴った。
『…ん?』
「ニヤけてる」
どうやら試合を楽しみにしているのが無意識のうちに顔にでていたらしい。
指摘された椛は自分の頬を触りながらニヘッと笑った。
「そーいえば椛って弟と似てないのね」
『ん…?そう?…まあ龍司は父親似だから』
「(いつもどーりだな…)」
ふと昨日の初めてみた赤面する椛を思い出す。
赤面は本人も無自覚だったようで戸惑っていたが、あの後家に送る頃にはいつも通りな椛に戻っていた。
特に抱きしめた事に関して何か聞いてくるわけでもない。
朝公園で会った時も、普段と変わりなかった。
「(何考えてんのか分かりづれー)」
彩子と話す椛の横顔を何気なく見つめる。
バスケが関わってる時はなんとなく分かりやすいが、それ以外な事になるとさっぱりで。
ましてや椛は普段ボーッとしているもんだから、女心がわからない流川にとっては尚更分かりづらい相手なのだ。
「(同じ事すりゃまたなるかな…)」
再び赤面する椛が見れないかと、頭の中でぼんやり思ってみた。
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