「おう…」
「………」
流川が声の主に視線を向ければ、そこには握手を求めてくる仙道がいた。
スタスタと近づいていき、その手を握るのではなくペシッと軽く叩く流川。
「なあ…あの茶髪のマネージャー、彼氏もち?」
「……」
一度チラリと後ろに視線をうつした仙道の言葉に、いきなりなんだと眉間にシワが寄る。
「あの子、名前なんてゆーの?」
「…藤真」
流川が若干不満そうに苗字だけ呟けば、それを聞いて笑みを浮かべた仙道が後ろにいる椛に向かって声をかけた。
「椛ちゃん」
何故か、下の名前を。
『…あ、仙道さん。お疲れ様です』
「お、名前ちゃんと覚えてくれたんだね。高校、湘北に入ったんだ?」
『はい。マネージャーになりました』
下の名前は教えていないはずなのに…と、流川は内心驚く。
しかも2人は普通に話し始めたのだ。
「最初違う人かと思った。髪のびたね」
『会ったのって半年ぐらい前でしたっけ?そんな変わりました?』
「ん、なんかますます女らしくなっててビックリした」
ニコリ微笑み椛の髪を触る仙道。特に気にする事もなく、椛はいたって普通に喋っている。
「…おい」
『わっ…ちょ、』
あまり見ていて気分がいいものではない。
2人に近づた流川は、椛の襟首を掴むとそのまま引っ張るようにして歩いて行った。
『…流川…?何いきなり』
「行くぞ」
ビックリし若干困惑していると、どあほうと呟かれる。
なんだかよくわからないが、とりあえず離れていく仙道にお疲れ様でしたと椛が手を振れば、楽しげな笑みを浮かべている仙道が叫んだ。
「椛ちゃん、俺今日カッコよかったー?」
椛を引っぱっていた流川の足が止まる。
『…はい、すごく。仙道さんて華がありますね』
一瞬キョトンとしてから仙道の問いにたいして頷き素直な感想を述べると、椛はニッコリ笑う。
その返事に満足したのか、笑顔のまま手を振り返す仙道。
「(…おもしれー、分かりやすい奴だな流川)」
無表情だがどこか不愉快そうな顔をしていた流川を思いだし、くくっと笑いをこらえた。
わかりやすい男
「どないしたんです仙道さん?」
「ん?いやちょっとね…」
『どーかしたの?』
「……別に」
『なら離してほしいんだけど…』
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