跡地


◆C 





シュミレーションルームへの道のりは短い。

「ったくマジで良い迷惑だ…何なんだアイツら!」

そもそも、蛇たちに見送りを強要されるような形で、ラボから押し出されてきたのだ。いくら仕事にケリを付けた後だったとはいえ、こんな理不尽な仕打ちにイライラしない方がおかしい。

足音をたてながら歩くジェミニマンは、この短い距離の中で、寧ろ苛立ちが解消するどころか膨れ上がっていることにさらに苛立っていた。

「チッ…だが、まあ良い。」

その五月蠅い元凶たちもいなくなった訳だと思い直す。
確かこの基地にはもう自分しかいないはず。これでやっと静かにオフを満喫できるというものだ。

「まあ、最初はぬるめのノルマで肩慣らしするか。」

何の疑問も抱かずにパスを入力し、ドアが機械的な音を立てて開くのを眺る。

そうやって、前回の判定データを呼び出し、再読込の準備をしていたときだった。

「ん?」

「あ、」




誰もいないと思っていたはずの室内に、見慣れた赤い機体を見つけてしまったのは。

2013/10/27(Sun) 21:25 

◆B 


騒音とも言うべき嵐のような雑音たちが出払った、その後。

ようやくジェミニマンは一息吐くようにしてソファーに沈み込んでいた。

「ックソ…アイツら好き勝手言いやがって…。」

もう帰ってくんな!と大人げない自身の発言にさえ嫌悪感から顔を歪める。

「大体揃いも揃って五月蠅すぎるだろ…。つか、何か指令出てたか?よりにもよってアイツら三機組ませるなんて、ねえだろ。」

しかしそこは流石に気を取り直し、まずデータを開いて確認する。何か指令が出ているなら、少なくともナンバーズには知らせられるはずだ。

はず、なのだが。

「おい…なんだコレ。」

そこに書かれていたのは明らかに天下のワイリーナンバーズが揃いも揃って参加するまでもない些末な任務内容で。

「は?単なる荷運びと護衛だと?ふざけてんのか…?いや当てつけか?」

騒がしいのはいつものことだが、少し勘ぐってしまう。

「そんなもん一機で十分だろうが…まさかオレの仕事流しやがったんじゃねえだろうな。…いや、止めだ。止め。」

そんな自分を認めたくなくて、気を晴らしたくて。

「…久しぶりに適当に撃ちまくるか。」

彼の足は自然とシュミレーションルームへと向かっていたのだった。

2013/10/25(Fri) 00:09 

◆A 


「よっ!ジェミニ!」

「久しぶりでござるな!引きこもり過ぎでござるよ!」

にっと笑みを浮かべたロボットが二体。待ちかまえていたように仁王立ちしている。

「…退け。」

何となくだがめんどくさい空気を感じ取り、言葉少なにそう言えば、大袈裟に肩をすくめられる。それが更に苛立たせるというのに。

「えー、やだあ。だって今からボクたち任務なんですケドー。」

「で、ござる!しかしジェミニ…少し見ないうちにまた背が縮まれ…、ぅお!」

「黙れと…言ってるだろうが!!!」

密かに気にしていることをつつかれ、レーザーが放たれる。しかしそれすらも楽しむかのようにオレンジは風を起こし忍者は駆ける。

「しーっ!シャドー、それ禁句禁句!ジェミニの背が低い方なのは元からなの!」

「おっと、すまぬタップ。某ったらうっかりさん☆」

「一々腹の立つ奴らだなてめえら…!!!」

てへ、とメットを叩くような仕草までして走り去る輩に最早殺意しか抱けない。しかし、

「っクソ!」

追いかけるが、周到に用意された輸送機が外に待ちかまえていて、あっという間に逃げられてしまった。

2013/10/22(Tue) 08:50 

◆「ジェミニって意外と単純だから、イライラしたらシュミレーションルーム行くんじゃない?」「「よしその手でいこう。」」←題名 









朝から、ラボに籠もってホログラフのデータ調整をしようと思っていた。

「…よし。」

映像の鮮明化と連動のタイミングをより正確に。集中力の要する作業は誰にも邪魔されたくない。もとより、部屋にはロックをかけ、いつものように一人で作業を進めていた。そう、順調だったのだ。

―ソイツが来るまでは。

「留守番だなんて、狡いよねぇ?」

「っ!?」

強制的にリンクを解除され呆気にとられる。しかし、すぐさま原因の緑が視界一杯に映り、ジェミニマンはこれでもかというくらい顔をしかめた。
「てめえ…」

どこから涌いたとか、もう面倒で口にしない。代わりに不機嫌がにじみまくった声で反応してやった。

この相手にはもとより通用するはずもないが。

「おや怖い。なんだってこんなところに閉じこもってるんだい。…こんなデータばかり眺めて。」

自分と睨めっこすんのはそんなに楽しいのかい?

そういってにやにやと頬をゆるめる。…怒りを覚えないという方が無理な話だ。

「スネーク!」

「なんだい?今から仕事の可愛い弟には見送りの言葉もないくせに!」

「黙れ!」

端から見れば幼稚に見える言い合いも、仕事を邪魔されたとなれば別だ。しかも今の今までそれも難なくこなしていたというのに!

「待ちやがれ!」

「あはは!何その顔傑作なんだけど!」

しかし追いかけて潜ったゲートの先、待ちかまえていたのは蛇だけではなかった。

2013/10/20(Sun) 22:06 

◆お互いに甘い(影蛇※擬人化注意!) 


「……」

「誰だよ…今日は絶対晴れるって言った奴…」

「…拙者でござるな……」

「……」


その日は確かに晴天だった。晴天も晴天。雲一つない空で、寧ろ日差しが蒸し暑くてたまらないほど。前日までの鬱々とした雨模様を吹き飛ばすように、誰もが傘も持たずに外出していただろう時に限ってこの

―土砂降りだ。

「いや、スコール?豪雨って言うの?」

「いやだからそんな目でこちらを見ないで欲しいでござる…!」

「傘なんていらないって置いて来させたのも誰だったっけ?」

「だから…申し訳ないと…」

益々しゅんとなる濡れ鼠な黒髪。青みがかったそれから水滴が落ちる。

「まあ…端からこうなることを望んでいたなら話は別だけどね。」

そう言う緑のもじゃもじゃももっさりと湿気を孕んでいて。ぎゅ、とおもむろに濡れたシャツを絞り溜息を吐く。駆け込んだ屋根の下は狭くて暑くて、おまけに雨音が五月蠅すぎる。常ならいざ知らず、半ば強引に連れ出されてきた身としては泣きっ面に蜂どころの被害では無い。当てつけのように言えば「そんな」と心外そうな赤目が見上げてきた。

「拙者は、その…」

「どーせエロいこと考えてたんだろ今」

「っ」


つい、と髪をかきあげ覗き込めば面白いほど赤くなる顔。

「……」

ますます溜息を深くすれば、瞬時に開き直ったらしい。シャドーはスネークのシャツを引っ掴み、勢い良くめくりあげた。

「おや、大胆だね。」

自分たちの周りに誰もいないとしても。と、感心したようにおどける蛇を後目に、憤然としたその手つきは何に触れるわけでもなく、とある物を蛇の服の中から取り出した。

「こんな時ぐらいサチスネは置いてきて欲しいでござるよ!」

「なあんだバレてた?」

「当たり前でござる!」

キュイ、と鳴き声のように音を出す、その機械をじゃらす指すら恨めしい。そんな様子を隠そうともしない相手に、スネークは嘲るように言う。

「じゃあせめてこの雨を止めて見せるくらいしないとねぇ。」

「何でそうなるんでござるか…」

「だってこんなものを見せたかったわけじゃないんだろう?」

雨粒が跳ね返るのも気にせず空を見上げる。生暖かくて、重い。

「ん?」

ふと、傍らの重量に気付き視線を戻す。グイと力任せにシャツを引きながら、思い切りにらみつけているような、その顔。

「…何?」

素でそう問えば、唇に熱いものが押し当てられて固まる。

言い訳にもならないよと笑えば、当り前だと言うかのように雨の中手をひかれ、やはり苦笑するしかなかった。

2013/09/02(Mon) 09:17 

◆兄が大変理不尽です(光と壊) 


「あのな、お前って本ッッ当に理不尽だよな。」

「あ?」

これでもかというほどの不機嫌さを全面に出し、顔をしかめ言い放つ。
大体、いつでもどこでもやることが唐突すぎるんだコイツらは。

特にこのオレンジのコイツ。もしこのまますっとぼけたことぬかすようなら、そのトボケたバイザーへし折ってやる。

薄暗いラボ。それに合わせたようなそんな剣呑極まりない雰囲気。それらをひっくるめて、気付いているのかい無いのか。依然としてマイペースさを崩さない兄機体に、フラッシュマンの突っ込みが食いかかった。

「あ、じゃねぇよ!あのなあ…オニイサマ、見てくれよこれ」

「ああ。」

「こっちはお前に押し付けられた報告書書き出し業務、んでそっちもお前に頼まれた基地のデータ収集案件だよな。」

「ああ。」

「…で?お前なんつった?え?この上演習付き合えだあ?」

「そうだ。」

「そうだじゃねぇよ!見て分かんねえのかオレちょー忙しいんだけど!?主にお前のせいで!」

「…フラッシュの言うことたまにむずかしい。」

「どこが!?分かるだろこの流れ!てか見ろよこの状況を!」

「…………」

「…………」

「見てるぞ。」

「そぉおじゃなくてぇえ」

「フラッシュは難しく考え過ぎなんだよ。」

脱力。文字どおりじっと見つめられた挙句、ケロッとした微塵も動じない表情をこうも堂々とされては、怒りも何もあったものではない。ていうか、本当に、何がいいたいのか分からない。単に邪魔しに来たのか。それすら分からずフラッシュマンは困惑する。

「つーか、なんでオレが悪いみたいになってんだよお前。大体なあ、お前の言うこと分かり辛ぇ。何なんだよもう…」

「?俺が言いたいこと分からないのか?」

「だぁから、いつからお前そんなジャイアンになったんだよ。言わずに分かるか!人間じゃあるまいし…」

勘違いや希望的観測なんてそんな器用なことできっこない。所詮言葉は言葉だ。今更過ぎる内容に頭を抱える。大体この機体が一番それを苦手としていただろうに。

「フラッシュと演習したい。」

「…てめぇ」

「さっきから言ってるだろ。」

「結局それかよ。」

これでは何度続けても同じ押し問答の繰り返しではないか。いい加減に無視して仕事に戻った方が…と思い始めた時、急にカメラアイの光が鋭くなった兄が、しかし依然としてきょとんとした表情のまま口を開いた。

「いや、違うぞ。」

「じゃあ他に何があんだよ。」

「何もないぞ。俺は、俺のことで忙しそうにしているフラッシュが好きなだけだ。だからだ。」








「…いや、は?」

だからだって、は?何が??

「な、分かりやすいだろ?」

「いや全然。」





(本当に、偶にめんどくせぇんだよなあ。…この兄機。)

2013/08/02(Fri) 08:30 

◆ホラーもどき(岩と蛇) 


ね、とその瞳はまるで純粋さ以外は知らないというかのように語りかける。

「ね、スネーク」

返事が返ってくるのは当たり前だとでもいうかのように。

見つめてくる。

「スネーク」

何を語るでもなく。ただただ、名を呼んで、見つめて。

胴から下を無くした自分はそれを、不思議なことに何の感慨も抱かず「ロボットのように」見つめているだけだった。








「…怖いよ。」

ロックはしばし押し黙った後、ようやくそれだけを絞り出したようだった。

「怖い話をしてって、君言わなかったっけ。」

そう返せば、「だけど」と口を噤んだ後、拗ねたように口をとがらせてくる。

「だって、ホントに怖いんだもんスネークの話…不気味っていうか…もっとお化けとか、怪談とか、」

「そんな子供だましみたいなの、期待してたのかい?」

「っ、そうじゃ、ない、けど…」

クスリと笑ってみせれば面白いように動揺する。夏だからと人間の真似事のように怪談話を強請ってきたかと思えばこれだ。

わざと暗くした室内に真昼の熱い日差しが白々しく線を作る。ロックはまだ納得がいかないという顔のまま、自室のカーテンに手をかけた。

「大体、暑いから怪談で涼もうだなんて、良く分かんないよ。」

「ふーん?唯の言い訳にしか聞こえないんだけど?」

「もー!スネークの意地悪!」

振り向いたその顔はつい先ほどまでとは違い、打って変わったような笑顔だったけど。ふと、思い出したかのように不思議な顔になる。

「さっきの話ってスネークの夢?」

「みたいなモノ、かな。良く分からない。」

「そっか。」

適当に言い繕えば素直に頷いた。

「ロックには夢なんていう概念が通じるんだね。」

「うーん…難しいことは分かんないけど…。ああこれかなっていうのは、たまに見るかも。」

「ふーん。それって僕も登場しちゃってたりするのかな?」

「えっ、いや、スネークは!」

「…何であからさまに動揺するかね。」

夢なんて知らない。見たこともない。けれどこの人間に良く似たロボットがそんな“性能”まで持ち合わせていることに少なからず驚いた。

「でも」

「何だい?」

もっと驚いたのはその後だったのだけれど。






「なんでそんなこと、したのかな。」

「え?」

「ぼくがスネークのこと、そんな風にするなんて」

「……」

「やっぱり、怖いよ。」

「あのねぇ、ロック」

(君が出てきたなんて、そんなこと一言も言ってないんだけど。…何でバレたかねぇ。)

2013/07/28(Sun) 23:55 

◆構いたがりな独楽→蛇 


(姿が見えないと不安になることなんて、良くある)






独り占めしたいわけじゃないんだけど。そもそも、そんなの気持ち悪いし。だけど、ただ、どこにいるか分からないとだなんて、もうそれだけで十分アイツに言わせれば気持ち悪いことなのかな。

「……」

なんて。何でもないようなふりをして、隣の薄い背中に凭れながらそう思う。

(なあスネーク)

無反応は最早許容だ。そんな風に自惚れても今更だろう。というより、自分に見つかる場所に行ること自体がつまりは「見つけて欲しい」なんじゃないのか、とまで考えたりして。偶にこんな風に側でボーっとしたくなるのだ。

(してるのはボクだけなんだけどねー)

一度こちらをチラ見したきり、相変わらず紅いカメラアイはぶれることなくディスプレイを見つめている。何が面白いんだろう、とずっと疑問は尽きないが、そもそもこの蛇にとってそんな基準すら必要ないんだとやっと分かってきたのも最近で。

「………」

はあ、と排気を深くし、重圧を重くしてみる。一瞬イラッとしたものを隣から感じたが関係ない。

「スネーク、」

「………」

「何でもない。」

そう返せば、タン!とキーをタイプする音が強くなった。何だろうこの安心感は。

「あのさ、」

「眠いんだろ。」

「!何で分かんだよ」

「エネルギー残量低下しすぎ。あと…スパークがさっきから探し回ってた。」

「あー、そっか」

そこでパタンと古びたパソコンを閉じて。目は向けないまま続ける。

「逃げてんのはどっちだよ。」

「スネークと一緒に見つけて欲しかっただけ。」

「ならお門違いだね。」

くい、と口角を上げ、ちっとも面白くなさそうにそんなことを言う。嘘なんかじゃないのに。

「良いじゃん。一緒に行こうよメンテ。」

「それ言うためにそんな無駄に破損して帰ってきたって言うなら今ここでシャットダウンさせるけど。」

「えー、冷たいー」

そうなのだ。思い出したかのように視界がブレ出す。かける体重がどんどん増えてしまうのが自分でも分かった。

「重い。」

「あはは」

「笑うな。」

「はー、だってさ、意地張った弟の面倒見んのもアニキのシゴトっしょ。」

「どこがだよ。」

「ダイジョーブだって。博士ならどんな不具合も直してくれるよ多分。


「知らないくせによく言う。」

「うん、知らないよ。」

―だって言いたくないんだろ?

そう言って目を閉じれば、不満めいた顔がため息をつきながらも腰を上げた音が聞こえて思わず笑ってしまった。





(メンテ嫌いな蛇と策士失敗な兄貴)

2013/06/30(Sun) 23:24 

◆no title 


そんなこんなとあれこれ話していると、無情にも不意打ちすぎるタイミングでラボの扉が開いた。

「え、アレ…マグネット!?もう良いの?」

「おいおい…まさかまだこれでも治らないっていうんじゃねぇだろうな…」

案の定先に姿を見せたのは赤いロボット。きょろきょろと辺りを見渡すその様子に一瞬不安がよぎるが、それでもフッとこちらに向けられた笑顔にそんな思いも霧散してしまった。

「!二人とも、待っててくれたのか?」

「そうだよもー!マグネットのバカバカ!心配させやがってバカー!」

「ったくホントにバカだなお前は面倒臭ェことさせんじゃねえよバカ」

「あー気のせいかいつもより辛辣じゃないか二人ともー」

ポカポカと殴りかかるオレンジを苦笑しつつ受け止めながらも地味に傷ついているらしい磁石がふいと下を向く。それを見てピタと動きを止めたタップマンは、しかし待っていましたとでも言うかのようににんまりと口を開いた。

「お帰り!マグネット!まー、正直どうなるかと思ったけどさ。何はともあれ無事で良かったじゃんか。」

「タップ…」

「てめえのせいでオレ様の美しい機体がまた汚れちまっただろうが。…ったくどうしてくれんだ。またてめえの大ざっぱなメンテ受けなきゃなんねえだろうが。」

「ジェミニ…」

「聞いたかスパーク。このボケ磁石はやっぱしぶといな。」

「あっジェミニだけ報告とかずるい!」

「お前は何のために今まで待ちぼうけくらってたんだよ…」

ぶつくさ言いながらもメンテ組にサラッと通信を入れている兄機にハッとするタップマン。
そう言われてみれば何でだろうと今更考えてしまう。…けれど、

「いや、だって一番にマグの様子が知りたくて…」

「お前な…」

「まあまあ」

理由という理由も思い浮かばず呟くオレンジを呆れたように見やるジェミニマン。
それを当たり前のように諫めたマグネットマンに誰からともなく笑みがこぼれた。

「あーあ、言いたいこといっぱいあったのにさ。どーでも良くなっちゃったじゃんよ。」

2013/04/28(Sun) 22:47 

◆no title 


「で、結局何だったんだろうねー」

「アレだろ。ただ単に同じような衝撃当てれば良かったってだけだろ」

「いやでもさ、シャドーたちが踏んづける前に一瞬正気に戻ってたじゃん!」

「アレは…アレだろ」

「アレって何だよ」

「アレはアレだ」

「………」

ところ変わってこちらは基地。

あんなカオスな空間からボロボロになりながらも帰還できたというのに、何故かどんよりとラボ前で頭を抱える面々。

アレ、とは例の赤い機体。即ちマグネットマンらしいのだが…

「なー、ジェミニ」

「んだよ」

「あんまり触れたくなかったんだけど…ボク的にまだラボから出てきてないスネークの方が気になるんだよねー」

触れたくない、と言いながらも口に出し、しかも普段のおちゃらけた態度からは想像がつかないほどの死んだ魚のような目(ロボットなのに)をしているのはどうなのだろうか。タップマンは先程からずっとそんな調子で依然として開かない分厚い壁のようなドアを眺めやりながら座り込んでいた。

「同感」

まあ、それを言うなら短く答えて返すジェミニマンもらしくないと言えばそうなのだろうが…

帰還してからというもの。破損率が高いニードルマンとハードマンは補給係のスパークマンと共にぶちぶちと文句を垂れながらも未だ処置スペースの中。こちら二機の眼前のラボにはどうやっても再起動しなかった赤と緑が連れて行かれていた。

「つかシャドーアイツどこ行きやがった…」

「マジでそれだよ。ホントもー逃げ足早いんだからあー」

恨めしく思うのはあのエセ忍者。いつもサラッと渦中から消える技だけは逸品で。センサーさえも反応しないということは、また誰かの影にでも隠れているのだろうか。

「絶っっっ対、責任擦り付けてやる…」

「出来るもんならな」

「何それ協力してよ!」

「アイツがとれる責任ならとっくに博士がジャンクにしてんだろ」

「うぅ…確かにそうだろうけど…」

「つーか、正直滅茶苦茶腹立つが…こうなるのを見越してアイツらがまたこんな面倒臭ぇこと仕組んだんじゃねえのか?」

「は?え、アイツらて…えぇ?」

またあの悪戯好きな創造主がいらぬ知恵を馬鹿忍者に吹き込んだとでもいうのだろうか。

「叩けば治る、とかな」

「ええ〜…ていうかアレは叩く程度の衝撃じゃないだろ…」

不意をついて輸送機で踏んづけるとか、荒療治にも程がある。

2013/04/15(Mon) 17:16 

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