日々妄想垂流し(銀魂・含)

□花街編
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『恋をする者が馬鹿を見る
色街、花街

哀しい、街…』



歌舞伎町で一際豪奢な造り
まるで吉原の遊廓を思わせる娼館での


これは出来事…




「邪魔するぜ」

黒の着流し腰には刀
黒髪の背の高い男が入って来た

「これは…!土方副長」

「いるか?」

「ハイハイ、御部屋でお待ち下さい。直ぐに酒肴も用意いたします」

「おい、アレ…」
「ああ、泣く子も黙る武装警察真選組の…」「土方十四郎がなんでまたこんな所へ…」

他の客達のコソコソ話など歯牙にもかけず
土方は悠然と階段を上がっていった


用意された酒を飲み始めて暫く、
廊下をドカドカと歩く音がすると、土方は口元を緩めた

「いい加減にしろよ」

障子が開くやいなや、いきなりパー子から悪態を付かれる
が、特に気にせず

「ま、お前も飲め」
と酒を薦めた



二人の出逢い

簡単に説明すれば、
以前、下手人を追って真選組の隊員達が大挙してこの店へと雪崩れ込んで来た時、
店を荒らされた事に腹を立てたパー子が
下手人共々隊員達も吹っ飛ばし見事な啖呵をきって賠償金迄もせしめたのだ
お上に楯突いたのだ
本来ならしょっぴかれても文句は言えないのだが
土方はパー子を捕らえなかった

そして「その代わり」と云わんばかりに
店へと通い始めた


「オメエに惚れた」

いきなりの告白に驚くも、いい金蔓として相手をしていたが…


苛々しながらパー子は部屋へ入るも、一応土方の隣へ腰を下ろす

「テメェのせいでお得意さん減ってんだけど、どぉしてくれんのコノヤロ―!」

つまり、
『真選組・鬼の副長が必ず指名する』為、
パー子の客が逃げ腰になり寄り付かなくなった事に腹を立てているのだ

「その分俺が可愛かってやってんだろ」

「うゎ、何そのオヤジギャグ!キショ…」

「金も倍以上置いていってるが
足りねえなら、幾らでも出す。俺以外の野郎にその肌身を許させたくねぇんだ…」

「…」

またしても熱い愛の台詞
少々うんざりしながら土方のお銚子を乱暴に奪い、そのまま飲み干す

「アンタ位の男が、なんで俺なんぞに食いつくのか
サッパリ分かんねーよ」

お銚子を膳へ置き、土方へともたれ掛かる

煙草を消し、パー子の肩を抱きしめ畳へと押し倒した

「惚れてるからに決まってんだろ…」

ゆっくり降りてくる土方の唇を待ち、
パー子は目を閉じた


===================
「失礼いたします」

障子の向こうから店の者が声をかけてきた

「恐れ入ります土方副長、パー子への指名が入りましたもので…

パー子ちゃん、高杉の社長さんだからね」

「ヘ〜イ、ヘイ」

ノロノロと立ち上がりかけた時、
強く腕をひかれ土方の胸にパー子は引き戻された

「なんで行くんだよ」
離すまいとする土方をウザそうに見やり、
「あのなぁ、
それがお仕事なんですけどコノヤロー」

「まだ、俺がいんだろがぁ」

「超お得意様なんだよ、高杉は。
一人で一晩分の売上落としてくし、店としちゃあ下にも置けねぇ扱いなんだ。

俺目当てなの、
だから俺が行くの。お前だってそん位分かってんだろ?」

「……知るか」

「ハァ〜…

いいから離・せ!!」

パー子は無理やり土方の腕を解く、
今度は無理強いをされなかった。

立ち上がり障子に手をかけながら

「アイツは、忙しいから」

ソッポを向き
詰まらなそうな土方に声を掛ける。

「急に仕事で帰るなんざよくあるんだ。
ま、今夜がそれかどうか分かんねぇけど、

そうなったらまたこの部屋に戻ってこれる、かもな。」

ふわり微笑んで出て行くパー子を土方は見送った


相変わらずのしかめっ面で
煙草に火を付ける



パー子はああ言うものの

あの高杉が
そお簡単にパー子を離す訳が無い…


分かっている、


分かっていても



「おい、酒だ」

「は〜い、只今」


土方は帰る素振りを見せはしなかった





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「ハーイ、お待たせ〜」
片手を上げて入ってくるパー子

「何時もより来るのが遅いな」
煙管で一服しながらパー子を見やる高杉

「だ〜から、お待たせっつったろ」
高杉の横にドッカと座る

「今日は土方か、坂本どっちに可愛いがられてた?」

「お客様の事はお話し出来ませ〜ん。
ってか、判ってんだろ?
店に四六時中部下入りこませてんだし」

「…フン、で何時俺だけのモノになるんだ?銀時」

「『パー子』だ、今は」

「(笑)あぁ、悪かった。
で、どうなんだ?パー子。」

「俺は誰かの私物になる気はねぇって言ってんだろ、
マジしつけぇ」

「お前がいつまでもそうしてると、また大勢の男共が死に急ぐ羽目になるんじゃねえか?
確か先月か、余所者がお前の客になった後近くの川で土左衛門で上がったらしいな。
その前の男は辻斬りか物取りに斬られて死んじまったとか。後は…」
「るせぇよ、全部テメェの差し金だろ」

「何のことだ?」

「確かに、俺の客になった後おっ死ぬ野郎が立て続けに出た。
…オメェが初めて俺の客なった後からな。」
薄笑いを浮かべ黙っている高杉

「オメェがどんな画策しようが俺の知ったこっちゃねぇ、客で来るなら幾らでも寝てやる。でもそれ以上を望むなら…
テメェとは金輪際、

無しだ!」

「お前にそんな権限があるのか?客は絶対的だろ」

「知ったこっちゃねぇつったろ

俺は、『俺』を貫く」

高杉睨み付けキッパリ言い切る。
暫し視線を合わせる2人、

やがて先に高杉が視線をそらせ再度、一服しながら

「…まぁいい、身請け話しは此までだ

今日のところは、な」
「今日のところはじゃなくて二度と…!」
腕を掴まれ高杉の胸の中に抱き込められる。

顎をとられ乱暴に上を向かされ

「いずれ判らせてやる、『俺』という男をな…」

唇を近づけ合わさる瞬間、

「知ってるぜ」

パー子の言葉に止まる高杉

「オメェが、どんなに

酷い男かなんて事は…」

高杉の首に両腕を回し、

そのまま二人は溶けていった…







===================
「パー子ちゃん、坂本の旦那
いらしたよ〜」

店の者からの呼出しに、パー子は嫌ぁ〜な顔をした

「パー子ぉ〜!ワシと一緒になって…オブっぉ!!」

肉のひしゃげる音が部屋に響く

「のーさんきゅーってんだろ!」



飛びついてきた辰馬をぶっ飛ばし、
パー子は殴りつけた右腕をプラプラさせた

「はーっはっはぁ〜、相変わらず恥ずかしがり屋さんじゃのぉ〜」

鼻血を流しつつ、
辰馬はムクリ起き上がり、パー子の前に立つ

「…っ!」

ヒクリ頬をひきつらせるパー子を
ギュッと抱き締めて、首筋へと顔をうずめた

「あぁ〜、ホンモンのパー子じゃあ。
相変わらずエエ匂いじゃのぉ〜」

「…化粧やら何やらしてるから」

「そげん意味じゃなくて、
『パー子のニオイ』じゃ。
安心するのぉ、帰ってきた実感するんじゃ」
「いろンなトコで、同じ台詞吐いてんだろ」

「なっ…!
何をゆーちょるかぁ!はっ‐はっはっ…」


「…」


ジットリと辰馬を見つめる


「まぁ…
長旅で世界中を行商しちょるからのぉ、

たまぁ〜にはそのぉ…
なぁ!」

懸命に取り繕う辰馬をよそに、パー子は冷たくあしらう

「…別に俺には関係ねぇし、
どうぞヤリまくって国内永久強制追放されちゃって下さい」

「アホぬかせ!
ワシはちゃんと付けてから…!」

「俺との時はナマだろ」

「…」

「酒、今用意…!」

突然深く口付けられるが、目を閉じ辰馬の背中に両腕をまわす

ゆっくり唇を離し頬へとキスした後

「のぉ、パー子。確かにワシはおんし以外ともヤル事やっとる、でもそれはそン時の欲を処理する為じゃ。
言い訳がましいがの、言わせてくれ。
ワシが本気で惚れとるのはおんしだけなんじゃ…
ワシと一緒に旅をせんか?
おんしは才にたけちょる、
商売も含め生涯の伴侶になってくれんかの」


「…言ったろ、
のーさんきゅー。
俺は此処が好きなの、商売とか超メンドクセ‐」
腕を緩めパー子を解放し正面から見据え

「ほぉ〜か、
だがワシは諦めん!

一生を歩むのはおんししかおらん、ワシは決めとるんじゃ!!」

「だ〜から、
勝手に決めんじゃねぇってぇの」

ウンザリするパー子


「あのな…、

世界中飛び回ってるテメェが、
律儀に俺ントコに『帰ってくる』ってぇのが、
結構…イイんだぜ…」

妖艶に微笑むパー子に辰馬は

「…パ、パー子、
好きぢゃあぁぁ―――!!!」

抱上げて布団が敷かれている隣へ
駆け込んで行った
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