短編
□あなたの為に
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月が綺麗な夜。
普段ならもうとっくに寝ている時間だが、
俺は今やっと帰ってこれた。ボロボロの身体
を引きずるながら。
「…疲れた」
いつもよりも過酷で危険な任務。
さすがの俺でも今回ばかりは本当に嫌になる。
何かが起きたわけでもなく、
予知のアリスを聞いたわけでもない、
何の確証も無い。
でも、胸騒ぎがする。
何かが起こりそうな…嫌な感じ…。
「…早く寝よ」
早くこの胸騒ぎが無くなってほしい。
この胸騒ぎはただの思い過ごしだ。
朝になれば、またみんなが笑っている。
朝になれば、またあいつが笑ってる。
ベットに向かっていると、
何故か窓の方に目が行った。
窓際には月の光を浴びて、
金色の輝きを放ってるとても小さい、欠片のような石があった。
「あいつのアリスストーン…」
あんな所に置いたままだったか?
アリスストーンをしまおうと窓際に行った。
その時、窓から見えたのは
「蜜柑…?」
このアリス石を作った本人が、
北の森へゆっくり入っていく姿だった。