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□繋がりは強すぎて、深すぎて
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「半兵衛!何時間ゲームしてんのよ!」
「あっ!勝手に部屋に入らないでくれないか」
「なによ偉そうにっ、休みの日くらい掃除したらどう!?」


高校が休みの日曜日に朝食をとってから部屋に閉じこもりっぱなしの弟の部屋を覗いてみれば
やっぱりカーテンも開けていない部屋の中でピコピコとひたすらテレビに噛り付いていた

学校では優等生ぶってなんかもてるらしいけど
家の中でこれじゃ彼女も出来ないわけだわ


「掃除なんてしなくても死にはしないさ」
「またこの弟は屁理屈ばっかり…!」
「姉さんこそ今日は仕事行かなくてもいいのかい?」
「残念、今日は休みよ」


部屋に散乱した勉強に役立てられていないだろう教科書などを足でよけながら
半兵衛の背後を通り、カーテンを開いて窓を開ける
まだパジャマのままの半兵衛は急に部屋の中に入ってきた冷たい風にびくりと背筋を震わせて
近くにあった布団を引き寄せて丸まった


「まったく、我が弟ながらだらしない格好ね」
「酔って帰ってきた時の姉さんに比べれば可愛いものだと思うけどね」
「この糞ガキ…これ以上屁理屈言うとそのゲーム叩き割るわよ」
「わー!止めろっ分かったから止めてくれ!!」


自分がこの世に生まれてきた瞬間に否定された存在とは残酷だ
人は人を愛するために生まれてくるんだろう?

愛する人が近く過ぎて
愛することが望めないなんて
いくら悩んだって悔やんだって、覆されないこれは定めなのか


繋がりは強すぎて、深すぎて
(何度諦めようとしたって諦めきれなかった
愛しい女を姉と呼ばなければならない屈辱)









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