TEXTU-たたかえ!白血学園-

□プライバシー*ノート
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笑っているまいにちを残して置きたくて。
いつだって笑えるように。

なんだって良かった。

選んだのは普通の大学ノート。

五冊セットのうちブルーを選んだ。

空の色。海の色。

コップも箸も歯ブラシも…君がブルーで僕がグリーン。

幸せの鳥だって全身に"青"の羽をまとってるから。


タイトルはつけない。
1ページ目はなにも書かない。

書くのは2ページ目から。


綴るのはきみとの何気ない日常。


しあわせノート。これが僕の日記帳。



「なに書いてんだ?」


「…。」

「…サイ?」

顔をのぞきこまれて、慌ててノートを腕で覆って、中が見えないようにする。

「チュウ君には関係ないものだよ!」

慌てて出たのはそんな言葉。

「あ、ワリィ。
なんか楽しそうな顔してたから、なにしてんのかな…と思ってさ。」

なんだか素直に謝られるとこちらが悪い気がしてくる。

「ぁ、や…その…ごめんなさい…」

「いやいやいや!!なんでサイが謝ってんだよっ。」


「っていうかさー、サイはそのノートいつも書いてるよねー。」

エンキ先輩は意外なとこをよく見ていて、たまに焦る。

なんだか、僕の"想い"まで知ってる気がしてしまう。
内緒の内緒。

君への想い、思う。胸の中からノートの中へ。


「え、そうなんスか!?」


その点チュウ君は鈍感で助かる。
マクロ先輩には悪いけどね。


「日記かなんかでしょー?
おれもつけてるよ、たまに。」

「たまにって…
まあ、エンキ先輩らしいっスけど。」

それにしても、だ。

「僕、そんなに楽しそうな顔してた?」


なんか、恥ずかしい。

「や、なんか楽しそうってか…嬉しそうって感じかな?」


「…。」

嬉しそう…って、僕が?日記を書きながら?

それは完全に無意識のうちに、ってヤツで。
もしかして僕にやけてたかな…?

ど、どうしよう…


書いていたのは今日の出来事。君のこと。


幸せを、忘れないうちに閉じ込めてしまいたかった。

手がスキップするように筆が進んだ。

嬉しかったんだ。

そんな、気の緩み。

誰かに見られてたなんて…恥ずかしい。


悶々と考え込んでいたら、再び、チュウ君の顔が目の前。

「サイ?」

「は…はひっ?」

噛んだ…恥ずかしいその2。

「ははは、なんか嬉しいことでもあったんか?」

そんな僕の慌てた様子からなにを感じたのか、自分のことのように嬉しそうな表情でチュウ君は笑う。

ノートの文面を少し読み返す。
まだ書きたいことが残ってる。
日常の今日を思い出してあったかくなるから。

「…うん!」

頷いた。思いっきり。

やさしいことばに嘘はいらない。


ポケットの中の幸せは、誰かが触れれば増えていく。

一つ、二つと。

そんな日常のカケラを詰め込んだ日記帳は、幸せのブルーの色をしている。


「へぇ〜、そういうことかー。
これは嬉しいねー。」

「え…?」

気づけば、僕の机の上に置かれていたはずのノートはエンキ先輩の手の中にあった。


…やっぱり、この人は信じちゃダメだ。


「プライバシー、ですっ!!」


取り返した日記帳。

今日のスペース、書くことが多くなりそうだ。


END

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